研究課題
最終年度である本年度は,昨年度に検証した一連の酸素,硫黄,セレン元素架橋屈曲型パイ電子コア誘導体の基礎物性評価,集合体構造解析,トランジスタによる移動度評価の結果を鑑み,もう一ランク上の高性能かつ高熱耐久性塗布型有機半導体材料の開発に取り組んだ.まず,これまでの検討で高性能かつ高熱耐久性を有する硫黄架橋屈曲型パイ電子コアについて,パイコアに導入する側鎖のスクリーニングを行ったところ,成膜性が高い,より最適な側鎖の選定に成功し,高移動度に加えて歩留まりの向上を実現した.この側鎖はこれまでと同様に高デバイス熱耐久性を併せ持つことも確認した.次に,さらなる高熱耐久性の向上を目指し,パイ拡張した新規な屈曲型パイ電子コアを合成した.得られた屈曲型パイ電子コアは,非常に興味深いことに,これまでよりも100 度以上高い結晶相の安定性(300 °C以上)を有する化合物であった.この化合物について,デバイスでの熱耐久性試験を行ったところ,これまで類をみない高いデバイス熱耐久性を実現した.この結果を検証すべく,一連の有望な熱耐久性屈曲型有機半導体材料について,SPring8で温度可変XRD測定を行ったところ,新たに合成した化合物は他の化合物と比較して明らかに熱膨張率が小さいことがわかった.他に本年度に明らかとしたこととして,酸素架橋屈曲型パイコア誘導体は導入する側鎖の位置が熱耐久性に重要であること,セレン架橋屈曲型パイコア誘導体は導入する側鎖の置換基の種類により,酸素や硫黄架橋体と異なり,良好な溶解性と熱耐久性を併せ持つ新奇な有機半導体材料であることなどである.最後に,本基盤研究を通じて,屈曲型パイ電子コア分子群は高性能かつ高熱耐久性塗布型有機半導体材料としての非常に有望であることを明らかとした.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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RSC Advances
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High performance oxygen-bridged N-shaped semiconductors with a stabilized crystal phase and blue luminescence
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