研究課題/領域番号 |
25288092
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20372724)
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研究分担者 |
荒谷 直樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (60372562)
葛原 大軌 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00583717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性有機材料 / ペンタセン / TTF / BODIPY / イソインドール / 有機半導体材料 / 発光材料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、熱や光などの外部刺激による構造変化を利用して、溶解度や不安定性の問題から合成が困難な化合物を合成すること、化学構造の変化に伴う物理的性質の大きな変化を,材料の機能変化として利用することを目的とする。我々はこの方法を『前駆体法』と称し、①π系が大きく酸化されやすいアセン系化合物の合成;②溶解度が低いために合成が困難な複素環化合物の新規合成ルートの開拓;③前駆体に光や熱の外部刺激を与えることで発光や半導体特性などの物理特性を発現する潜在性機能材料の開発に関する包括的な研究を行い、機能性材料の開発へと展開することを目的としている。 ①新規ペンタセンダイマーの合成に関しては、ペンタセンダイマーの合成中間体を利用して安定ラジカルの合成に成功し、溶液中での半減期は11日以上であった(Chem. Commun. 2015, 51, 6734-6737)。 ②含硫黄アセンの新規合成では、電子求引性置換基を有するテトラセン縮環TTFの合成に成功し、その電子状態について詳細に検討した(Tetrahedron Lett. 2015, accepted). ③新規潜在性発光材料の合成では、熱変換前駆体と光変換前駆体を組み合わせ、4つの吸収発光状態をin-situで発現できるBODIPY化合物の合成に成功した(Chem. Eur. J. 2015, 21, 4966-4974)。さらにその発光・消光メカニズムについても詳細に検討した。また関西学院大増尾貞弘准教授との共同研究により、光変換前駆体からペンタセンへの結晶中での変換反応とそれに伴う発光挙動を詳細に検討した(Phys. Chem. Chem. Phys. 2014, 16, 13483-13488)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①π系が大きく酸化されやすいアセン系化合物の合成:ペンタセンダイマーの合成中間体を利用して安定ラジカルの合成に成功した(Chem. Commun. 2015, 51, 6734-6737)。さらにこれらペンタセンダイマー中間体や、置換アントラセンダイマーを合成し、共同研究により超高真空下でのナノリボン合成を試み、アントラセンリボンの合成には成功した。 ②溶解度が低いために合成が困難な複素環化合物の新規合成ルートの開拓:含硫黄アセンの新規合成では、電子求引性置換基を有するテトラセン縮環TTFの合成に成功し、その電子状態について詳細に検討した(Tetrahedron Lett. 2015, accepted).またジチアノナセンの合成に成功し、その酸化還元挙動を明らかにした。含窒素縮環化合物の新規合成を行い吸収・発光挙動を明らかにした。 ③前駆体に光や熱の外部刺激を与えることで発光や半導体特性などの物理特性を発現する潜在性機能材料の開発に関する包括的な研究と、機能性材料の開発:熱変換前駆体と光変換前駆体を組み合わせ、4つの吸収発光状態をin-situで発現できるBODIPY化合物の合成に成功した(Chem. Eur. J. 2015, 21, 4966-4974)。さらにその発光・消光メカニズムについても詳細に検討した。また関西学院大増尾貞弘准教授との共同研究により、光変換前駆体からペンタセンへの結晶中での変換反応とそれに伴う発光挙動を詳細に検討した(Phys. Chem. Chem. Phys. 2014, 16, 13483-13488)。さらに東大・東京学芸大との共同研究により、光変換に伴う薄膜構造の変化に関する共同研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
①π系が大きく酸化されやすいアセン系化合物の合成:超高真空下で蒸着可能なペンタセン及び高次アセンのナノリボンを合成するためのユニットの合成にフォーカスして研究を進める。 ②溶解度が低いために合成が困難な複素環化合物の新規合成ルートの開拓:合成した含硫黄アセンの有機FETやSCLCの測定を行い、有機半導体材料としての評価を行う。 ③潜在性機能材料の開発に関する包括的な研究と、機能性材料の開発:東大・東京学芸大との共同研究により、時分割X線構造解析を用いた光変換に伴う薄膜構造の変化の詳細を明らかにする。一方熱変換前駆体におけるアルキル置換基の構造と薄膜構造に関する相関を明らかにし、溶液プロセスによる薄膜構造制御について議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初より基金化を予定していたが、次年度は最終年度における物性評価に関する共同研究が当初の予定より増加したため、研究打ち合わせと実験のための旅費として用いるため
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次年度使用額の使用計画 |
SPring8などでの共同実験や、研究打ち合わせ、及び研究成果報告のための旅費として用いる。
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