研究課題
基盤研究(B)
生分解性高分子からなるナノ構造材料の精密調製法の開発のため、本年度は第一段階としてポリ(n-ヘキシルイソシアナート) (PHIC) と生分解性高分子(ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA))からなるブロック共重合体、および、PCLとオリゴ糖からなる新規ブロック共重合体の精密合成を行った。また、第二段階として、得られたブロック共重合体の相分離挙動を確認した。さらに第三段階として、PHICと生分解性高分子からなるブロック共重合体を用いて生分解性ナノポーラス材料の作成を検討した。具体的には、水酸基を有するPHIC-OH をマクロ開始剤とした トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、ラクチドの重合により、新規ブロック共重合体 (PHIC-b-PTMC, PHIC-b-PCL, PHIC-b-PLLA) の精密合成を達成した。これらの新規ブロック共重合体とPHICおよび生分解性高分子より作成したフィルムをヘキサン浸漬することにより、各生分解性高分子のナノポーラス材料を作成した。また、PCLとオリゴ糖からなる新規ブロック共重合体をクリック反応により調製し、高分子構造と自己組織化挙動の相関関係に与える影響を検討した。ブロック共重合体のオリゴ糖部分の割合に応じて、このブロック共重合体は11.2~14.0 nmと非常に小さいドメイン間隔を有する相分離構造を形成し、20 nm以下のドメイン間隔を有するミクロ構造の構築に有用であった。以上、本年度の本研究では、生分解性高分子からなるナノ構造材料の精密調製法として、二通りの方法論を確立した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度計画の「ナノ構造を有するポリヒドロキシアルカン酸(P3HA)の精密合成および物性評価」に関しては成功していないが、「ナノ構造を有するポリ乳酸の精密合成および物性評価」と「ナノ構造を有するポリラクトン類と脂肪族ポリカーボネート類の精密合成および物性評価」に関してはおおむね達成した。さらに新しい関連研究として「ポリカプロラクトンとオリゴ糖からなる新規ブロック共重合体の精密合成とナノ構造化」にも成功しており、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
本研究課題の今後の推進方策として「光切断反応を利用した生分解性ナノ構造材料の調製」および「ナノ構造を有する多糖、核酸、タンパク質の精密合成および物性評価」について検討する。また、「ナノ構造を有するポリヒドロキシアルカン酸(P3HA)の精密合成および物性評価」に関しても引き続き検討する。最終的には生分解性高分子からなるナノ構造体の新規作成法を確立する。
当該助成金が生じた状況は年度末の購入に関する経理上の問題と物品の納品遅れがある。また、研究の性質上、試薬やガラス器具の購入が多く、実験の進行により購入時期が変動することから次年度への繰り越しとなった。次年度への繰り越しとなった予算は主に試薬とガラス器具に使用する。翌年度分として請求した研究費と合わせたて効率的に使用するように心がける。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Polym. Chem.
巻: 5 ページ: 588-599
10.1039/C3PY00985H
Macromolecules
巻: 46 ページ: 1461-1469
10.1021/ma3026578
巻: 46 ページ: 8932-8940
10.1021/ma4019526