研究課題
本年度は光切断反応を利用した生分解性ナノ構造材料の調整法を検討した。昨年度までに、生分解性高分子/ポリヘキシルイソシアナート(PHIC)/相溶化剤(生分解性高分子とPHICのブロックコポリマー)の3成分のブレンドをヘキサン洗浄することで生分解性高分子からなるナノ構造材料を調製できることを見出した。しかし、この手法では洗浄後の材料中に相溶化剤が残存する問題点があった。そこで本年度は、PHICと生分解性高分子の接合部分に光切断性の官能基(o-ニトロベンジル基)を導入した新規ブロックコポリマーの合成とナノ構造材料調製への応用を行った。具体的には、末端アジド化PHICとエチニル基を有するo-ニトロベンジルアルコールをクリック反応し、これをマクロ開始剤としたラクチドの開環重合によって目的のブロックコポリマー(PHIC(ONB)-b-PLA)を得た。溶媒アニーリングによりPHIC(ONB)-b-PLAをミクロ相分離させた後にUV照射し、ヘキサンに浸漬することでほぼ純粋なポリ乳酸からなるナノ構造体を得た。小角X線散乱測定の結果から、得られたナノ構造体は20 nm程度の周期性を持っていることが判明した。以上より、光切断性の官能基を巧妙に利用することで高純度の生分解性ナノ構造体を容易に調製できることを見出した。さらに、本年度は10 nm以下の規則構造を構築することを目的として、原子移動ラジカル重合とクリック反応の組み合わせにより多糖とポリスチレンからなるブロックコポリマーを新規に合成した。このようにして得られたブロックコポリマーは実際に10 nm以下の規則構造を形成することが明らかとなり、多糖類からなるナノ構造材料の前駆体として有望と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度以降の計画である「光切断反応を利用した生分解性ナノ構造材料の調製」に関してはおおむね達成できている。また、「ナノ構造を有する多糖、核酸、タンパク質の精密調製および物性評価」に関しては、本年度の検討により課題解決に向けた重要な知見を得ている。これらの理由から、研究全体としておおむね順調に進展していると判断できる。
本研究の今後の推進方策として、「ナノ構造を有するポリヒドロキシアルカン酸の精密合成および物性評価」と「ナノ構造を有する多糖、核酸、タンパク質の精密調製および物性評価」を引き続き検討し、最終的に生分解性高分子からなるナノ構造体の新規作成法を確立する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
Macromolecules
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