研究課題
申請者は2010年、高強度ダブルネットワークゲルの技術を駆使することによって、ゲル前駆体にUV光を照射するだけで高強度ゲルを製造できる画期的な合成方法の開発に成功した。本研究は、これまでの申請者の研究成果に立脚し、高強度ゲルや形状記憶ゲルを高い空間分解能で自由造形可能な、世界初の三次元ゲルプリンタを開発することを目的とし、高強度・機能性ゲルの合成と構造解析、さらに力学機能の評価の全てにおいて、先端的な研究手法を縦横に駆使することによって、空間精度としてミクロンオーダーの造形を目指す。最終的には、ゲルプリンタによって情報科学技術と高分子ゲル技術をシームレスに統合し、未来のものづくりに変革をもたらすことを目標とする。平成26年度は下記を実施した。【テーマ2. 自由造形ゲルの高強度化と機能化】5) P-DNゲルの強化機構の解明 P-DNゲル内部の内部構造と力学特性の相関機構を解明した。申請者が独自に開発した走査型顕微光散乱(SMILS)はゲルの内部構造の測定に特化した構造解析装置であるSMILSを活かして、P-DNゲルが高強度化することの内部構造を解析した。6) 高延性付加の研究 申請者がゲル力学特性の新たな向上法として最近開発した、相互架橋網目構造(ICN構造)を持つ高延性ICNゲルは透明で非常に高い含水率96%でありながら、引張破断ひずみ600%以上を達成している。このような新しいゲルを3Dゲルプリンタで高精度に自由造形することを試みた。7) 形状記憶機能の研究 申請者が最近開発した透明な形状記憶ゲルを3Dゲルプリンタで高精度に自由造形することを試みた。
2: おおむね順調に進展している
上記、テーマ2.に関して、下記の事項を達成した。5) P-DNゲルの強化機構の解明 P-DNゲルが強化するときの内部構造の解析に成功した。その条件で作成したP-DNゲルの力学的異方性の評価を行い、積層式の3Dプリンタで得られるプラスチック材料に比べて、3Dゲルプリンタで得られるゲルは異方性が少ないことが確かめられたが、これは最初には予測できなかった新しい知見である。6) 高延性付加の研究 優れた延性を持つICNゲルを3Dプリンタで造形しうることが示され、当初の目標は順調に達成されている。7) 形状記憶機能の研究 透明な形状記憶ゲルを3Dプリンタで造形することが示され、当初の目標は順調に達成されている。この間、雑誌論文(査読付論文)9件、招待講演33件、国際学会発表23件、国内学会発表17件、総説10件、特許出願1件を行った。
【テーマ3. 自由造形ゲルの応用 --新しい工業材料造形法としての可能性を追究する--】8) 人工血管・マイクロ流路造形への応用 本研究で開発されるゲルプリンタを活用すれば、例えば患者のCTスキャンの画像データから、患者の動脈瘤部分の血管をそのままの大きさや形で、透明のゲルとして造形することが可能である。この技術によって、脳動脈瘤コイル塞栓手術の効果事前検証や訓練が可能になる。これまでの3D画像データの立体視や樹脂モデルによる位置確認のみでは、手術効果の検証や訓練までは困難であった。本研究では、PC上の画像データをゲルプリンタに送ってゲル人工血管の造形を試みる。前述したSMILSのシステムは、透明な管状ゲル中の液体の流速や、液中の粒子分散状態の測定が可能であり、ゲル人工血管中にコイル閉塞を行ったことによる流速変化や、血球の分散状態変化の評価が可能である。また、この技術はMEMSへの適用も可能でマイクロ化学チップ状へのマイクロ流路造形への活用も可能である。具体的にゲル人工血管やマイクロ流路を試作し、その性能を評価する。9) アクチュエータへの応用 ゲルプリンタによって造形した高強度ゲルや形状記憶ゲルを動く機械や光学デバイスに応用することを検討する。光学素子としての応用であり、透明性の高いゲルについては、変形によって倍率の変化するレンズを作ることができる可能性があり、申請者らは検討を進めている。実際に眼の水晶体は変形するゲルでできたレンズであり、この研究成果は眼の研究や医療につながる可能性が高い。これらは具体的にゲルプリンタで光学デバイスを試作し、その性能を評価する。
物品費に差額が生じたため。
今年度の物品費として使用する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (62件) (うち招待講演 33件) 図書 (10件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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