研究課題/領域番号 |
25288100
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
塩野 毅 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10170846)
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研究分担者 |
中山 祐正 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273576)
田中 亮 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60640795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱可塑性エラストマー / ポリオレフィン / 重合触媒 / リビング重合 / ブロック共重合体 |
研究実績の概要 |
通常の合成ゴム(エラストマー)は,高粘性の直鎖状高分子を共有結合で架橋することにより成形物として利用している.その加工プロセスは,エネルギー多消費型であるとともに,労働力を必要とする.また,架橋した成形品は不溶・不融であることからリサイクル性も低い.これに対し,熱的に変化する物理的相互作用を利用した熱可塑性エラストマーは,架橋エラストマーの特徴とプラスチックと同様の加工性・リサイクル性を有する材料として期待されている.本研究の目的は,申請者らが見出した配位重合触媒技術を応用して,構造の単純な炭化水素モノマーから高耐熱・耐薬品性に優れた熱可塑性エラストマーを開発することである. 昨年度は申請者らが開発したリビング重合系を用いてハードセグメントとしてガラス転移温度(Tg)が164~200℃程度の1-オクテン-ノルボルネン共重合連鎖(poly(C=8-ran-NB))を,ソフトセグメントとしてTg が 約-5℃の ata-PPを有するトリブロック共重合体の合成に成功し,それぞれの連鎖長を制御することによりエラストマー性を示すことを明らかとした.本年度は他の物質との親和性と水素結合によるハードセグメントの強化を期待して,poly(C=8-ran-NB)連鎖に水酸基を導入することを検討した.触媒は極性官能基で失活するため1,7-オクタジエンの一方のビニル基をヒドロホウ素化したモノマー(I)を合成し1-オクテン-ノルボルネン-の三元共重合を検討した結果,共重合は擬リビング的に進行することを見いだした.さらに生成ポリマーをアルカリ条件下過酸化水素で処理することにより1-オクテン-ノルボルネン-7-オクテン-1-オール三元共重合に変換できることをを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードセグメントとしてガラス転移温度(Tg)が164~200℃程度の1-オクテン-ノルボルネン共重合連鎖(poly(C=8-ran-NB))を,ソフトセグメントとしてTg が 約-5℃の ata-PPを有するトリブロック共重合体の合成に成功し,それぞれの連鎖長を制御することにより当該ポリマーがエラストマー性を示すことを明らかにした.さらにハードセグメントである poly(C=8-ran-NB)に水酸基を導入する手法を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
ソフトセグメントとしてオレフィンエラストマーとして重要なエチレンプロピレンランダム共重合連鎖(Tg = 約-50℃)の導入を検討する. また,これらのブロック共重合体は申請者らが開発したリビング重合触媒により初めて合成が可能となったものである.リビング重合はブロック共重合体を精密に合成する優れた手法であるが,ポリマー鎖と当モルの開始剤を必要とする.類似の物性を有する高分子材料をより効率的に合成する手法について検討する必要がある.
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