研究課題/領域番号 |
25288105
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
本間 剛 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70447647)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 二次電池 / ガラス / 結晶化 / ナトリウムイオン電池 / 正極活物質 / リン酸 / ポリアニオン / 非晶質活物質 |
研究実績の概要 |
本研究ではリン酸鉄ナトリウム系ナトリウム系正極をキーマテリアルとして、ガラスの結晶化という特異な合成プロセスによって得た正極活物質における、結晶化機構の解明、結着材を必要としない電極の創製を目的としている。初年度では、充放電特性が良好となる組成範囲を明らかにし、その化学耐久性、電池としてのサイクル特性は、リチウムイオン電池におけるポリアニオン系正極として、よく知られているLiFePO4に匹敵することを明らかにした。そして、今年度は以下の興味深い成果を得た。 これまでは大気中でガラスを合成していたためFe3+から構成される前駆体ガラスであったが、黒鉛るつぼを用いて窒素雰囲気中で溶融することで、結晶と同じ鉄の価数であるFe2+が支配的な前駆体ガラスが得られることを明らかにした。合成したガラスの組成は3成分系でNa2FeP2O7とNaFePO4を結んだ、つまりNa:Fe:P=2:1:2から1:1:1の間で5点連続的に変化させた。既往の論文でNa4Fe3P2O7(PO4)2に対応する組成まで、溶融急冷法でガラス化することが明らかとなった。ラマン分光分析によるガラス中のリン酸ユニットの構成を評価したところ、組成比が1:1:1に近づくにつれて非架橋酸素に由来するQ2ユニットから次第にQ1そしてQ0と構成ユニットが変わっていることが明らかとなった。均一なガラス化はしなかったが、NaFePO4組成でも超急冷した試料はQ1ユニットが存在し、このことは本来Q0しか存在しない結晶ではなく相当量の非晶質が存在している事を示唆している。 非晶質のまま正極活物質としての機能性を評価したところ、115mAh/gの可逆容量を示し、Na2FeP2O7を越える材料の創製に成功した。つまりガラス相も良好に活物質として機能することは定比組成に縛られない材料設計が可能であるというインパクトをもたらす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実績の概要でも述べたが、ガラス体が良好に可逆容量を示すことは、組成を任意に選べるだけで無く、活物質がガラス単独、結晶あるいはその複合体何れでも機能することであり、このことは例えば、熱処理温度を低くすることができ、全固体電池を構築する場合、アニール処理を行っても、固体電解質や負極活物質との反応を抑制できる可能性がある。焼結により、正極、固体電解質、負極が一体となった全固体電池への展開が期待できる成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は、前駆体ガラスの結晶化度と活物質の機能性との関係について評価を進める。注目する組成では対応する結晶としてはNa2FeP2O7, Na4Fe3P2O7(PO4)2そしてNaFePO4の三種類しかないが、前駆体ガラスはこれらの定比組成に縛られること無く合成できる。結晶化によって誘起される微構造を電子顕微鏡等を用いて評価する。また、結晶と残存ガラスにおける鉄の価数状態をマイクロXPSにより、リン酸ユニットの構成をマイクロラマン分光分析により評価を実施する。 そして、それらの結晶化ガラスを活物質としてセルを作製し、充放電特性におよぼす影響を調査する予定であり、これらの成果が得られれば、ガラス相を結着材とした従来にはない活物質を提案できるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品の購入において端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に購入予定の消耗品費と併せて使用する予定である。
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