ナトリウムイオン電池の正極活物質としてリン酸鉄ナトリウムに注目し、ガラスセラミックスの合成およびその電気化学的評価を目的としており、本年度はガラス単独での正極活物質としての機能性を明らかにし、さらなるエネルギー密度の向上を目指した。 その成果として、Na2O-FeO-P2O5系ガラスで、FeOの含有量を増やすとNa2FeP2O7とNaFePO4を結ぶ組成においてほぼ全域でガラスが得られることを明らかにした。このうち、40FeO-60NaPO3の組成は対応する結晶がFe2+を含有する結晶は存在しないものの、還元溶融することで、Fe2+を含有したガラス体を得た。ハーフセルを作成し、充放電抑制を評価したところ115mAh/gの高い可逆的容量が得られた。従来のNa2FeP2O7の97mAh/gをはるかに超える値である。ラマン散乱分光を用いてリン酸ユニットの構造を評価したところ、孤立したリン酸塩以外に縮合したリン酸ユニットが存在することが明らかとなった。NaFePO4に対応する組成においても結晶では存在しない、縮合したリン酸構造が確認された。密度測定を行ったところ、ガラスの密度は対応する結晶と比較して3~6%も低密度であることが明らかとなった。これらの結果から、ガラス化することでナトリウムイオン伝導しやすい構造をもたらすと考察できる。NaFePO4のように結晶では完全にイオン伝導のチャネルが消滅するのに対してリン酸が縮合した構造を有するガラスにより、分極の小さな充放電特性が得られたと考えられる。
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