研究課題/領域番号 |
25288106
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 尿 / 尿素 / 水酸化物イオン導電体 |
研究実績の概要 |
人間の尿は水分の他に尿素、クレアチニン、尿酸、アンモニアなどから構成されており、このうち尿素には6.7wt%もの水素が含まれている。このため、Taoらは尿を燃料として使用するアルカリ形燃料電池を報告しているが、得られる出力密度は4mW cm-2 と小さな値であった。1) 尿はその他の水素キャリアー化合物とは異なり、製造コストが実質的にゼロであるので、必ずしも高い出力密度を発揮する必要はないが、出力密度のさらなる向上は尿燃料電池の水素代替燃料電池としての地位を高めるものと期待される。今回の研究では、尿燃料電池の作動温度を高め、電極、特にアノードの分極抵抗を低減し、電池性能の改善に努めた。Ru/Cアノードは、調製時の溶液を塩基性にしていくとRu粒径が小さくなるとともに、結晶相が金属から酸化物へと変化した。また、これらの傾向はクエン酸ナトリウムを加えることによって顕著になった。これに伴って、反応開始電位が次第にネガティブになり(vs. air reference electrode)、同時に尿素酸化反応が活性化された。尿を燃料に使用した燃料電池(Citrate-stabilized RuO2/C anode| Sn0.92Sb0.08P2O7-PTFE | Pt/nitrogen-doped graphene cathode)では、作動温度の上昇とともにOCVが高くなり、また放電による電圧降下が小さくなり、結果として17mW cm-2の出力密度を300℃で得ることができた。また、尿中の尿素濃度を高めることが可能であると言われている。そこで、尿素濃縮尿の代わりにいろいろな濃度を持つ尿素水を燃料として発電特性を評価した。出力密度は尿素濃度とともに増加し、尿素20wt%で27 mW cm-2に達したが、これ以上尿素濃度が高まると逆に低下した。これは高濃度尿素水では蒸気圧降下が深刻となり、アノード室の水蒸気分圧が大きく低下したことに由来すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までの研究で、Sb5+ドープSnP2O7を凌駕する、新たな水酸化物イオン導電体を開発できた点は既に報告した。今年度はこれを電解質に使用した尿燃料電池を試作・評価し、従来報告されている性能よりも6-7倍高い性能を得ることができた意義は極めて大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様に開発した電解質を使用して、尿燃料電池の他にアルミニウム燃料電池、さらに余裕があればその他の金属燃料電池やキャパシタ応用にも展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
電解質の応用研究として、当初予定では燃料電池のみを想定していたが、蓄電(バッテリー)への展開も可能であることが判明した。バッテリーとして、アルミニウムが負極として使用できることを見出したが、その他にも例えば鉄なども可能であると予想される。特に鉄は自然界に豊富にあり、またアルミニウムよりも安価であるため、そのバッテリーへの応用を来年度、試みる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
主として研究員の人件費に充てる予定である。
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