階層構造や複合構造の中の異なる階層同士が、その接合界面を介して、分子やイオンのような化学種,機械的力,電子や電荷をやり取りし,機能面で協奏し発現する機能を「階層機能」と定義する。本研究では、多孔体や結晶粒間の界面、材料や結晶構造中に見出せる「すきま」、単結晶基板とエピ膜の界面など、種々の物質界面に着目し、階層機能の設計学理の構築をめざす。薄膜化や高圧の効果も活用できる。複合ナノ構造を制御した触媒・光触媒の機能設計、金属窒化物・酸化物の物性や機能について調べる。例えば二種の物質を組み合わせた複合光触媒系の界面設計、準安定相の生成や物性変化を期待した酸化物や窒化物などの合成や解析が対象となり得る。 本年度は、粒子とメソポーラスシリカの複合構造においてメソポーラスシリカがナノ構造を固定化させ、かつ、外界からの分子やイオンのアクセスを許すオープンな構造が保証されることを生かしたナノ複合構造を利用した光触媒についての機能解析、および、層状複水酸化物(LDH)のナノ粒子の特異な特性の解析を行った。複合光触媒では、酸化チタン粒子メソポーラスシリカ複合体の高活性要因の解析に注力した。水中の有機分子の吸着等温線を測定し、その吸着量の変化に対応して光触媒活性が増大することを見出し、メソポーラスシリカのナノ空間に分子が吸着濃縮されることにより反応が加速していることを明らかにした。吸着性の高い分子に吸着量の低い分子を高濃度で混合した反応条件では、メソポーラスシリカの存在により高吸着性分子の反応速度低下がおおきく抑制されることを確認した。このような反応挙動などを総合すると、メソポーラスシリカのナノ空間が反応場となり光触媒反応が加速されており、本研究のナノ複合構造の合理性がより明確となった。LDHの特性解析では、熱分解挙動に関し、ナノ粒子特有の挙動を見出した。
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