研究課題/領域番号 |
25288109
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 則雄 九州大学, 産学連携センター, 教授 (70128099)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 安定化ジルコニア / 固体電解質 / ガスセンサ / 混成電位 / 環境汚染ガス / 固体電気化学 / 揮発性有機化合物 / 炭化水素 |
研究実績の概要 |
起電力、電解電流、インピーダンスなどを応答信号として利用する固体電解質型ガスセンサは、自動車排ガスなどの環境汚染物質のモニタリングに有望である。本研究では、酸化物イオン導電体などの固体電解質を基本構成材料に用いたセンサ素子において、検知極界面における電気化学反応の触媒活性を最適制御することにより、画期的で優れたガス検知特性を引き出すことができる固体電解質ガスセンサの開発を目指す。本年度は昨年度に引き続き、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を固体電解質に用いた混成電位型ガスセンサの作製・評価を行った。以下に得られた主な成果をまとめた。 1)種々の酸化物に貴金属ナノ粒子を添加した検知極を作製し、5種のガスに対する応答特性を調べた。その結果、ロッド状の酸化チタンに1 wt.%のPdナノ粒子を添加した検知極は、プロパンに対して選択的な応答を示すことが分かった。これは、Pd添加によって検知極層における気相触媒活性が、特定のガス種において変化するためであることを明らかにした。 2)混成電位型ガスセンサの作動温度の低温化を目指し、種々の炭素材料を検知極として初めて検討した。その結果、活性炭を用いた場合に300℃でNO2の選択的な検知が可能であることを見出した。これまでに報告例のない炭素材料を検知極に用いることにより、YSZセンサの作動温度を低温化できることを発見した点で興味深い成果である。 3)高価で複雑な素子構造が必要とされるPt/空気参照極に替わる固体参照極として、様々な酸化物を参照極として検討した。その結果、酸化コバルトが500℃以下の温度域で種々のガスに対して不活性であり、YSZセンサの参照極材料として機能することが分かった。さらに、酸化ニッケル検知極と酸化コバルト参照極を用いたプレナーYSZ素子を試作し、このセンサによりトルエンなどの揮発性有機化合物に対して、数十ppbの極微量検知ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、固体電気化学式ガスセンサの高機能化を目指し、触媒活性の最適制御による特異ガス応答特性の発現、界面における電気化学触媒活性の制御、センサ素子の最適構造と最適作動条件の検討、特異特性発現機構の明確化である。この目標に対して、YSZ固体電解質を用いた混成電位型ガスセンサにおいて、酸化チタンにPd微粒子を微量添加した場合に、炭化水素に対する気相触媒活性を劇的に変化できることを明らかにした。また、低温作動が可能な新たな検知極材料として炭素材料が有望であることを見出した。さらに、酸化コバルトが様々なガスに対して不活性であり、高価なPtに替わる固体参照極材料として使用できることを明らかとした。これらの結果より、固体電気化学式ガスセンサにおける新たな知見を得ることができた。したがって、本年度の研究はおおむね計画通りに順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本年度に引き続き、固体電気化学式センサの高機能化を目指して、以下に示す項目を検討する。 1)触媒活性の最適制御による特異ガス応答特性の発現:特異的なモルフォロジや組成を有する反応表面を形成することにより、気相反応および電気化学反応に対する触媒活性の制御を行って、特定ガスに対する優れた応答特性の発現をねらう。 2)触媒活性制御した検知極を用いた素子の特性評価:新規な検知極材料を用いて触媒活性制御したYSZ素子について、ボテンシオメトリックセンサとしてだけでなく、インピーダンスメトリックおよびアンペロメトリックセンサとして、種々の被検ガスに対するセンシング特性(感度、選択性、応答速度、安定性)について、詳細な評価を行う。 3)特異特性発現メカニズムの明確化:検知極自体や電極界面の組成や状態によりどのように分極曲線が変化するかを詳細に調べ、各反応の触媒活性の制御により感度や選択性が向上するメカニズムを明確にする。 4)小型ガスセンサの試作と実作動 : YSZ基板上に、触媒活性を最適制御した検知極や新規固体参照極を形成して、小型素子を試作してその応答特性を評価するとともに、実環境中での作動を試みる。
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