固体電解質型ガスセンサは、環境汚染物質のモニタリングに有望である。本研究では、固体電解質を基本構成材料に用いたセンサにおいて、電気化学反応や気相反応の触媒活性を最適制御することにより、優れたガス検知特性を引き出せるセンサの開発を目指す。本年度は昨年度に引き続き、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いたガスセンサの作製・評価を行った。 1) 平衡電位応答型のYSZ酸素センサの検知極材料として、Fe系ペロブスカイト型酸化物の応答特性について調べた。検討した材料の中から、BaFeO3が酸素のみに選択的に応答し、ネルンスト式に従った酸素濃度依存性を示すことが分かった。この検知極は、繰り返し応答やCO2に対する耐久性も優れており、高価なPt検知極を代替する可能性がある。 2) Zn-Ta-Oを検知極に用いた混成電位応答型水素センサの開発を行った。この検知極を500℃において、水素を含む窒素中で14日間のエージングを行うことで、水素感度が4倍以上に増大し、優れた特性を示すことが分かった。さらに、エージング効果についてXPSを用いて調べたところ、検知極表面に形成されたZnTa2O6層が応答特性の改善に寄与していることがわかった。 3) 熱的・化学的耐久性に優れたZrSiO4に、電気化学活性が高いAu微粒子を添加した検知極を有したYSZセンサを作製した。Au微粒子の添加量を変えて応答特性を調べたところ、10wt%のAuを添加した検知極は、水素に対して選択的に応答することが分かった。この検知極の触媒活性を分極測定によって調べたところ、水素に対してのみ高い電気化学反応活性と低い気相触媒反応活性を示すことから、良好な特性が得られることが明らかになった。
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