研究課題/領域番号 |
25288111
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
廣田 健 同志社大学, 理工学部, 教授 (30238414)
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研究分担者 |
後藤 琢也 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60296754)
加藤 将樹 同志社大学, 理工学部, 教授 (90271006)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 溶融塩電解用電極 / スピネル型金属酸化物 / ヘルシナイト / 固相反応法 / 固溶体 / 磁気特性 |
研究実績の概要 |
単相のスピネル型構造の鉱物ヘルシナイトFeAl2O4と、これにMnを添加した(Fe1-xMnx)Al2O4 (0<x<1.0)固溶体粉体を、α-Fe2O3(粒子径Ps: 0.1 μmφ)、γ-Al2O3(Ps:0.01 μmφ)およびMnO(Ps: 0.15 μmφ)の活性微粒子を用いて、1.0%H2-bal. N2のガス中900℃で6hの固相反応により調製した。XRD(X線回折)により粉体のキャラクタリゼーションの後、粉体はAr雰囲気下1050℃、10 min、50 MPaの条件でパルス通電加圧焼結(PECPS)により緻密化した。このようにして作製された相対密度97%以上のスピネル単相の高密度セラミックスは、XRD、SEMおよびSQUID磁力計により評価された。これらのセラミックスはx=1.0のMnAl2O4(常磁性)以外、反強磁性であり、x:0.4~0.6組成のMnを添加固溶したセラミックスが比較的高い磁化率を示した。これらの内容を粉体粉末冶金協会平成25年秋季大会に講演発表し、次いで論文投稿して採択された。 更に、このMnを添加しないFeAl2O4セラミックスについて、溶融塩電解の電極として使用するため、高密度大型セラミックスの作製を検討し、常圧下で焼結した(常圧焼結体)をAr雰囲気下、200 MPa、1200℃にて2h熱間静水圧プレス(HIP)処理して相対密度97~98%の高密度セラミックス電極を作製した。一方、セラミックスの電気伝導性を向上させるために化学量論組成から少しFe成分を増やしたFe1+δAl2O4セラミックスの合成条件の確立、合成した電極の電気伝導度の測定、また酸化物としてSiO2を添加した系で合成した電極を使用した電解実験を行い、Fe1+δAl2O4セラミックス電極のフッ化物系に対する不溶性陽極としての利用可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定したヘルシナイトFeAl2O4と、セラミックスの電気伝導性を向上させるために化学量論組成から少しFe成分を増やしたFe1+δAl2O4セラミックスの合成条件を確立し、大型電極セラミックスの作製迄こぎ着け、更に、溶融塩電解まで着手したことにより、研究計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,当初予定した目的を達成するために,1. 電極形状に関する検討 平成26年度までの検討で最適とされるヘルシナイトについて、電解に適した寸法および形状の選定を行うために種々の形状の電極の作製を行い、得られた電極について酸素発生試験を行うことで、酸素発生に適した電極形状を決定する。 2. 本検討で作製した電極を使用した電解プロセスの提案および原理実証 まず、電解プロセスのフィージビリティーについて検討可能な熱力学パラメータの集積(例えば、溶融塩中での各種酸化物の標準化学ポテンシャル、活量等)を行う。具体的には、本実験で得られた不溶性陽極を用いて、溶融塩中における酸素電極反応(O2/O2-)に関する標準電極電位および各種酸化物の溶解度を測定・整理する。ここで得られた知見をもとに、新規不溶性陽極を用いて、酸化シリコンからの太陽電池級シリコンの分離・回収や、酸化鉄からの鉄の回収や、各種希土類酸化物からの希土類金属の回収等の熱力学的な可能性について検討・整理をする。 得られた結果を基にして,実際に電解セルを作製し、溶融塩を建浴し、遷移金属酸化物や希土類酸化物を溶融塩に添加・溶解させ、実際に分離・回収の原理確認を行い、本提案プロセスの妥当性について評価する。 まず、昨年および本年度1)の検討に基づき作製したヘルシナイトを実際に陽極として使用し、酸素発生電極としての可能性について速度論的な検討を行う。具体的には、酸化シリコンや酸化鉄等を溶融塩に添加した系において、電流密度と酸素発生量を検討することで、実用陽極としての特性を明らかにする。更に、電解前後での陽極の電極重量の増減について検討し、溶融酸化物中での酸素発生挙動について定量的な検討も行う。ここで得られたデータを基に、再び1)の電極形状に関する検討を行い電極の作製を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度で使用する予定があるため、690,766円残しました。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に使用します。
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