研究課題/領域番号 |
25288112
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石橋 晃 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30360944)
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研究分担者 |
近藤 憲治 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50360946)
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 無機半導体デバイス / 光電変換素子 / 2次元導波路 |
研究概要 |
従来の素子構造では、太陽光の入射方向と生成したフォトキャリアの移動方向が平行である為、光吸収とフォトキャリアの収集の間にはトレードオフがあり、両者を同時に最適化することは難しかったが、太陽光の進行方向とキャリアの移動方向を直交させることで、このトレードオフを解消できる。特に、昇降順を最適化したマルチストライプのフォトン-キャリア直交型の新型光電変換素子構造では、光源のスペクトル全体に亘る光電変換が可能であるため、高い変換効率が得られると期待される。その為の基礎として、まず周期的屈折率変調構造の屈折率差を⊿n、深さDとすると、回折格子に垂直入射する波長λの光は, 2π⊿n D/λで表される位相差を持つので、これをπとなるようにDを設定することで、3次元空間伝播光を2次元導波光化する構造(リディレクション導波路)の設計を行い、一定範囲の波長に関しては、高い導波方向変換効率を得ることができた。また導波路から、その端部に置かれたマルチバンドギャップ半導体素子への光の進入効率を高め、更に半導体中での光電変換効率を向上させる構造を案出した。 またSiをベースに異なるバンドギャップを有する半導体層を形成することを試みた。新しい熱処理装置を完成するとともに、大阪大学小林光教授との共同研究により、マルチストライプの要素部分であるSiベース素子の変換効率を高め、(当"研究室"比ながら)約10倍程高い光電変換効率(η~5%)を得ることができた。今後、上記改良プロセスをGeを拡散したSiGeベースの半導体素子に適用することで、バンドギャップの異なる半導体マルチストライプを形成した。また、上記導波路と半導体素子を高歩留まりで接合するのに好適なプロセス環境としてのクリーンユニットシステムプラットフォーム(CUSP)を進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽光の入射方向とキャリアの移動方向を直交させて、マルチ半導体ストライプ構造に対し、十分な光吸収と高いキャリア収集効率を完全に両立させるための要素技術を同定しつつある。特に、3次元空間伝播光を2次元導波光化する構造(リディレクション導波路)のコンセプトを固め、平面導波路部分に関して好ましい構造がシミュレーションにより得られつつある。また、この光の有効利用の観点から当該導波路から光電変換を担うマルチバンドギャップ半導体素子への光の進入効率を高めるとともに、更に半導体中での光電変換効率を向上させる構造を見出し、次年度におけるその検証を行える段階に到達できた。
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今後の研究の推進方策 |
2次元導波化させたい光の波長に応じて決まるが、ストライプ数Nに対応して、用いるバンドギャップ数もN個になるので、対応して周期Lも(例えば深さ方向の自由度を利用することで)複数構成し、2次元導波帯域の拡張を行う。また、今年度の成果として得られた周期的屈折率変調構造面上に、更に、光波伝播方向変換シートを最上層として集積することで、リディレクション導波路を完成し、光電変換素子との結合を図る。これらのリディレクション導波路の各要素項目に関しては、企業群とのこれまで協業関係を生かして、進捗を早める。 導波路とそれに隣接する光電変換素子を一体系として扱い、光電変換特性の向上に向けた構造最適化を、まずシミュレーションを先行させて行い、効率的に構造の実作へとつなげたい。直射光、拡散光問わず、十分な光導波ができることを実証し、従来型の素子に比べての優位性を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究進捗・効率を高めるべく、導波特性のシミュレーションを先行させて遂行し、初年度に予定していた導波路作製/素子接合システムの実機作製を上記シミュレーション結果を踏まえて、第2年度により完全な形で行うこととしたため。 既存のシミュレーターによる導波特性の最適化と併行して、第2年度に導入する導波路・半導体素子結合シミュレーターをし、導波路と素子の一体化の最適化をまず計算により行い、その結果を踏まえて、導波路作製/素子接合システムの実機を作製し、効率的に素子特性の向上・評価を行っていく。
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