研究課題/領域番号 |
25288112
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石橋 晃 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30360944)
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研究分担者 |
近藤 憲治 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50360946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光電変換素子 / 太陽電池 / 2次元導波路 |
研究実績の概要 |
従来の太陽電池においては、吸収光子数とフォトキャリア収集効率は、共に電極間隔、言い換えれば半導体層厚に依存し、トレードオフの関係にある。即ち、光吸収の増大とキャリアの収集効率の向上とを両立させることは困難であり、光電変換効率の向上を妨げていた。無機半導体をベースとして、フォトンの進行方向とフォトキャリアの移動方向が直交した、マルチストライプ構造を有する新しい光電変換デバイスの実現を念頭に、太陽光(黒体輻射)の吸収とフォトキャリアの収集効率の最適化を両立可能とし、全太陽光スペクトルに亘って光電変換を実行するべく、空間伝播する光を2次元導波光化するための構造(リディレクション導波路)の最適化をシミュレーションを基に行った。従来の入射モードでは、光吸収量に支配されて変換効率が決まる活性層厚みの小さい領域でも、端面入射配置では高い変換効率が得られる。移動度の高い無機半導体材料を用いることで、電極間隔を広げることが可能となり、より高効率の光電変換素子を実現することができる。Si太陽電池を2次元平板構造に埋め込み装置を立ち上げ、フォトン・フォトキャリア直交型半導体太陽電池作製の要素技術が固まりつつある。 上記素子の清浄プロセス環境であるクリーンユニットシステムプラットフォーム(CUSP)が、無塵環境としてのみならず、無菌環境としての側面からも展開が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽光の入射方向とキャリアの移動方向を直交させて、マルチ半導体ストライプ構造に対し、十分な光吸収と高いキャリア収集効率を完全に両立させるための要素技術を同定した。Si基板を用いた平面型太陽電池により、初年度の約5%から約8%へ向上させ、当該変換効率をコンスタントに得ることができるようになったので、当該素子を2次元の樹脂の構造体のエッジに埋め込む装置を立ち上げ、当該太陽電池の端面から、pn接合に沿って光を導入する導波路構造作製に向け、目処をつけた。 また、シミュレーションにより、空間伝播する光を2次元導波光化するための構造(リディレクション導波路)の詳細を検討した。①まず、3次元伝播光を2次元面にほぼ垂直に方向変換する層、②続いて、当該垂直入射光を、2次元面に沿うように進行方向変換する構造、③当該2次元導波が半導体端面に入射する際の反射率を下げる構造、④マルチ半導体ストライプ構造内を有効に導波する構造の4つに分解できることを見出した。 上記の①の光波伝播方向変換シートを共同研究先より入手し、方向変換特性の基礎データを得始めた。計算と実測値の比較をおこない、従来型の素子に比べての優位性を検証できる段階へ来た。 上記2次元導波路とSi光電変換素子を接合するのに好適なプロセス環境としてのクリーンユニットシステムプラットフォーム(CUSP)の高清浄度を半導体プロセスのみならず、医療や住環境として展開する可能性についても進展した。
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今後の研究の推進方策 |
光波伝播方向変換シート付き平面導波路の導入によって、高効率化を進めていく。 特に、周期的屈折率変調構造や反射光学系のシミュレーションを行い、2次元導波光化させるための条件を計算により求めていく。平面導波路のエッジに、太陽電池のpn接合面が当該導波路に並行になるように配置し、エッジ入射での光電変換の基礎特性の評価を行う。その際、励起光の端面入射を効率的に行うための端面形状最適化も実施する。波長に応じて特性がどう変化するかも測定する。 こうして得られる2次元導波路構造面上に、更に、光伝播方向変換シートを集積することで、空間伝播してくる光の入射方向にあまり左右されずに、その下にある周期的屈折率変調構造、或いは反射光学系構造に対して垂直に光が入射する配置を実現し、直射光、拡散光を問わず、十分な光導波ができることを実証する。また、GaInN系素子をベースとして、マルチバンドギャップ構造を上記太陽電池の構造に組み込むことを検討する。従来型の素子にくらべてのフォトン・フォトキャリア直交型太陽電池の優位性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に、新型光電変換素子の導波路構造最適化・光場シミュレーションを担当する技術補助員を雇用する原資を確保したため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の目的のためH27年度に新たに雇用するシミュレーション担当技術補助員の謝金に充てる。
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