研究課題
これまでの検討から、縦型トランジスタの抜本的な性能向上のためには、有機半導体薄膜の縦方向の移動度、すなわち膜厚方向移動度を向上させることが最も有効であるという結論に至った。一般的に有機半導体薄膜では、横方向デバイス(FETなど)において高い移動度が報告されているが、縦方向の移動度は遙かに低い。。そこで今年度は基礎的視点に立ち戻って、縦方向移動度を向上させるための分子配向制御と、縦方向移動度の評価方法の検討を行った。基板に対してface-on配向することが知られているPTCDAをtemplate layerとして用いて、MePTC分子の配向制御を行った。わずか2nmのPTCDA膜の上に蒸着したMePTCは下地の影響受けてface-on配向を示し、実際に空間電荷制限電流法(SCLC法)により測定した縦方向移動度が4倍程度向上した。さらにこの薄膜を用いて、縦型メタルベース有機トランジスタ(MBOT)を作製したところ、その出力電流および電流増幅率が改善され、移動度の向上が縦型トランジスタの性能向上に資することを実証した。また、縦方向移動度を評価するための手法として、注入の影響を強く受けるSCLC法の問題点を解決するために、CELIV法(Charge Extraction by Linearly Increasing Voltage)に着目し、特に絶縁膜にキャリアを蓄積して取り出すMIS-CELIV法を新たに立ち上げ測定手法の開発を行った。その結果、P3HT、NPDなどのいくつかの典型的な有機半導体材料において、妥当な移動度が得られることを実証した。縦方向移動度の向上は、縦型発光トランジスタのみならず、有機ELや太陽電池など多くのサンドイッチデバイスにインパクトを与える重要なテーマであり、分子配向と移動度の系統的な関係性調査、そして縦方向移動度向上のための材料設計指針の確立が重要であるという結論に至った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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