研究課題/領域番号 |
25288114
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石井 久夫 千葉大学, 先進科学センター, 教授 (60232237)
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研究分担者 |
野口 裕 明治大学, 理工学部, 准教授 (20399538)
中山 泰生 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (30451751)
K.K. Rasika 千葉大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90631557)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光電子分光 / 光電子収量分光 / キャリア注入 / 有機EL素子 / 有機太陽電池 / ギャップ内準位 |
研究実績の概要 |
電極界面を通したキャリアの注入・取り出しは有機エレクトロニクスの性能を左右する重要なプロセスである。従来は有機半導体のHOMO(またはLUMO)準位と電極のフェルミ準位のエネルギー差に相当する”キャリアの注入障壁高さ”というパラメーターで一元的に解釈されてきた。しかしながら、HOMO準位とLUMO準位の間には低状態密度を有する準位(ギャップ内準位)が存在することが知られており、ギャップ内準位を介したキャリア注入の効果を考慮する必要がある。本研究では、(i)我々がこれまで開発を進めてきた低迷光・低エネルギー光電子分光と光電子収量分光を活用し、フェルミ準位直下の状態密度を5桁をこえるダイナミックレンジで直接観測し、(ii)電子構造測定と電気測定を同一試料・同一環境下で行い、界面の電気特性を解析し、キャリア注入機構の解明を目指す。 平成26年度は、電気特性をin-situで測定するための試料ホルダーを作成した。試料ホルダーには、ホルダー本体に加えて、2つの独立した電極を付加することができ、有機ELなどの2端子素子、トランジスタなどの3端子素子の電気測定を行えるようにした。また、光電子分光測定時に電場が撹乱されにくいように配慮した設計となっている。ex-situで作成した有機トランジスタを用いたテストは終了し、光電子分光とのin-situ測定を開始したところである。これと並行して、高感度光電子計測によるモデル系の電子構造測定を前倒しですすめ、(i)ITO/CuPc/C60/BCP型標準有機太陽電池において、C60/BCP界面にギャップ準位が形成されていることや、素子全体のポテンシャルプロファイルの解明に成功し、(ii)配向分極を示す有機EL材料系において表面に負イオンが蓄積しているなどの結果を見出した、これらの系のin-situ電気特性評価を平成27年度に進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in-situ電気測定のための装置改造が当初計画より遅れていたが、技術的な点はクリアした。並行して進めている、有機EL素子や有機太陽電池のモデル界面の電子構造の高感度測定に関しては、有機太陽電池系(ITO/CuPc/C60/BCP/Al)では、ギャップ内準位の観測と素子のポテンシャルプロファイルの決定に成功し、Advanced Energy Materials誌のinside coverに採用されるなどの評価を得ている。また、有機EL材料においては、膜の配向分極により生じる表面の分極電荷により捉えられた負イオンの高感度光電子計測に成功し、新しい電子親和力の評価法として期待出来る結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに先行して界面電子構造の高感度計測を進めてきた系について、実際に光電子分光測定と電気測定のin-situ測定をすすめ、キャリアの注入・取り出し機構の解明を進める。また、平成26年度に成功した負イオンの高感度光電子計測を発展させて、トランジスタ構造中の負性キャリア(負イオン)の直接観測もすすめ、有機半導体のキャリアに関する解明も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
in-situ電気測定の装置開発が当初予定より遅れたため、それを利用した実験が平成27年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
有機EL素子、太陽電池の電気特性・電子構造の同時測定を平成27年度にすすめ、予算を執行する予定である。
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