研究課題/領域番号 |
25288115
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
入山 恭寿 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30335195)
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研究分担者 |
本山 宗主 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30705752)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 二次電池 / 界面 / イオン伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究は、Li+伝導性の固体電解質を強誘電体単結晶基板上に形成して複合電解質のモデル界面を作製し,電流計測原子間力顕微鏡(AFM)を用いて界面近傍の局所イオン伝導率を計測する手法を開発する。本成果により、複合電解質の界面近傍でイオン伝導率が変調する機構を解明できれば、高Li+伝導性複合固体電解質の開発への研究が期待できる。 H26年度はBaTiO3微粒子を分散した基板上にガラス電解質を被覆し、基板面内方向でのイオン伝導率の分散率依存性を評価した。その結果、BaTiO3の分散率に依存して新しい緩和過程が生じ、その領域の活性化エネルギーが低減した。即ち、界面近傍に高LI+伝導領域が存在することを示唆している。この領域に関する情報を得るためにBaTiO3単結晶/ガラス電解質の積層体を作製し、EELS及びSIMS測定を用いてLiの分布を計測した。いずれの手法においても、界面近傍でLiの濃度がわずかに増大する結果が得られた。この詳細について現在検討を進めている。 AFMを用いた局所伝導計測において、液体Ga-In合金を用いて探針-試料表面の接触抵抗の低減を検討した。その結果、Ga-In合金を固体電解質基板上に大量に乗せたときには電解質のイオン伝導に起因する半円弧が認められたが、先端にのみGa-Inを付着させインピーダンス測定を行うと測定値が高周波領域で発散し、期待した効果が認められなかった。一般的なRC並列回路では、R値が大きくなるにつれ、高周波数域における測定確度は低下する。Pt櫛形電極上に約20 nmのガラス電解質を成膜し、探針を0.02 Hzの速度で走査させながら、100 mVの振幅電圧と500 mHzの固定周波数でインピーダンス測定を行った。その結果、Pt電極領域の直上でLiPON膜の抵抗が最小となるインピーダンスの分布が得られ、周波数を適切に設定することで、局所イオン伝導率の差異を膜厚方向に検出できる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局所イオン伝導率の計測における強誘電体/固体電解質界面近傍でおこるイオン伝導挙動及びそのLi+濃度分布を計測できた点は予想以上の成果と考えられ、あとはこの領域のイオン伝導挙動を計測する段階に入っている。この局所評価には、AFMを用いた計測を第一に考えているが、現在の所は計測においてノイズが混入する、抵抗が大きすぎて計測できない等の問題点が生じており、この部分の改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度はAFM探針に直接リード線を取付けることで、インピーダンスのノイズが減少し、ある程度の接触面積までは半円弧が測定できることがわかった。現在、探針で直接測定するところまでできていないが、AFM探針に直接リード線を取付けた状態で、測定回路系をさらに改良していく。測定系については、導電性探針に金粒子を先端に付けたAFM探針を使用することで接触面の安定化させる。また、窒素またはアルゴンを導入したグローブボックス中で導電率測定を行う。結晶質固体電解質のLLZ固体電解質ペレットも使用する。固体電解質表面に存在している炭酸リチウムや水酸化リチウムをグローブボックス内で研磨し、即座に測定を開始することで表面の接触抵抗の低減を図る。LLZ表面の粒界を横断するように測定し、インピーダンスの相対変化に注目する。この際、周波数を固定し、インピーダンスを測定しながら表面を走査させ、結晶粒、粒界が持つ抵抗変化の傾向に注目する。この測定を試料表面の何箇所についても行い、局所的なイオン伝導率変化の定量化を行う。
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