AFMの振幅変調型モードを用いて、探針先端と試料との間での外力変化に起因する振幅・位相変化を計測・解析し、これを用いて試料の局所誘電率及び表面電位を計測する手法を確立した。始めに金と高配高性熱分解黒鉛の二種類の導電性基板を使用し、探針・試料間の電位差を制御しながらフォースカーブを測定し、この値を自作した計算プログラムに入力して、各測定位置での高さ変位(Z点)における探針試料間の相互作用力を求めた。この結果をグローブボックス中での試料の比誘電率及び表面電位を計測するための検量線及び初期物性値として用いた。 強誘電体の一つであるBaTiO3粒子を分散し、この上にLi+伝導性ガラス電解質(LiPON)を被覆して複合モデル固体電解質を作製した。薄膜中のLiPONバルク領域及びBaTiO3との複合領域における比誘電率を計測した。LiPONバルク領域の誘電率はおよそ20の値が得られ、これは文献値(16-20)に近い値を示した。一方、LiPON層で被覆されたBaTiO3粒子近傍を計測した結果、BaTiO3粒子近傍で位相が負に変位する領域が観測された。これは、BaTiO3粒子の周辺でLiPON内での電子伝導性或いはイオン伝導性が増加していることを示唆している。BaTiO3粒子を静電噴霧法で櫛型電極上に分散し、その上にLiPON薄膜を成膜した場合複合モデル電解質の伝導率をEISで計測すると二つの緩和成分が認められる場合がある。この緩和に対応する現象がAFMで可視化して計測されていると考えられる。
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