研究課題/領域番号 |
25289004
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北條 正樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252492)
|
研究分担者 |
西川 雅章 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60512085)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 計算画像診断 / 先進複合材料 / 複雑系マイクロメカニクス / 力学微視構造 / サーモグラフィ |
研究概要 |
複合材料構造成形におけるプリフォーム技術の高度化のためには,繊維・樹脂から成る力学微視構造に依存する三次元微視的変形を追跡し,製造後の初期微視構造を制御し残留応力低減を図る試みや強度・長期耐久性の観点から力学微視構造を最適化する試みが必要不可欠である.そこで本研究では,先進複合材料の製造から強度・信頼性までをマイクロメカニクスの観点から系統的に評価することを目的に,近年著しく発達してきた可視化計測技術と画像処理技術を複合材料分野への導入を図り,構造の成形や賦形および構造強度や長期耐久性に影響を及ぼす微視力学因子について明確にすべく,研究を遂行した. 1.平織複合材料を対象として,長期耐久性の指標の一つである疲労損傷累積過程に関して,赤外線サーモグラフィによる散逸エネルギ計測法に基づいて定量化する手法を検討した.疲労サイクル数の増加に伴い,温度とひずみの変化が現れ,両者の定性的な傾向が一致することが示された. 2.平織複合材料の力学微視構造を三次元均質化法解析を用いてモデル化し,損傷力学に基づく構成式を用いることで,疲労損傷累積過程と微視構造の関係について議論する力学モデルを構築した. 3.プリフォーム複合材の微視構造変化と樹脂硬化に伴う残留応力との関係について,繊維束間変形に着目して,実験および有限要素解析により検討した.繊維束交差部と樹脂に発生する残留応力の関係,および,硬化ひずみの異方性に関する知見が得られた. 4.ステレオ撮影法を基礎とした三次元画像再構築技術により,繊維の三次元立体構造を二次元画像から再構築する方法を提案した.ナイロン繊維不織布を用いた実験により得られた繊維の三次元立体画像は,引張試験により変形した繊維の形状を再現できていることが確認できた.本手法により,繊維基材中の繊維位置を評価することが可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合材料構造の長期耐久性評価という観点から,疲労損傷累積に及ぼす材料内部の微視構造の影響を評価することが重要である.この点に関して,力学モデルの構築を行うとともに,サーモグラフィ計測を用いた散逸エネルギー法に基づく評価法の有用性が確認され,一定の成果を得た. 一方,構造成形時に生じる内部の残留ひずみは製造後の構造強度に影響する.この残留ひずみの評価を目的として,樹脂の硬化収縮に伴う残留ひずみの評価の観点から力学モデルを構築した.また,三次元画像再構築技術に基づいて材料内部の繊維の微視的変形を評価する手法を構築した.この手法を応用することで,構造賦形時の繊維変形追跡や残留ひずみの評価が可能であり,研究が前進したと言える.
|
今後の研究の推進方策 |
長期耐久性評価に関しては,サーモグラフィで計測した温度変化と実際の損傷量との対応関係についてさらに検討を進める.織構造の異なる供試材を対象として疲労試験を実施し,赤外線サーモグラフィによる計測を実施する.サーモグラフィ計測結果に現れる力学微視構造の影響の定量化を行う方法についてもあわせて検討を行う.これにより,三次元微視構造と疲労損傷過程に関して考察を進める予定である. また,これまでに構築した三次元画像再構築技術について,織物プリフォームを用いた実験に応用する.織物中の繊維束単位の微視的変形を三次元的に追跡する方法について検討するとともに,プリフォームの賦形を模擬した実験に応用し,繊維変形の定量化を行うことも検討する.
|