研究課題/領域番号 |
25289009
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅田 淳 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60162913)
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研究分担者 |
加藤 昌彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70274115)
曙 紘之 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50447215)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 革新接合材 / 疲労損傷機構 / 微視的観察 / 内部観察 / 疲労寿命評価 / 疲労き裂進展 / 溶接継手 / 摩擦撹拌継手 |
研究概要 |
本年度は接合継手として,スポット溶接継手,リモートレーザー溶接継手,摩擦撹拌点接合継手の3種類を取り上げ,以下の成果を得た. ①スポット溶接機継手に関しては健全材の内部微視的観察により疲労破壊損傷機構を明らかにし,疲労き裂発生寿命は荷重レベルの依存性は若干あるものの概ね全寿命の50%程度であることが判明した.また,疲労寿命は荷重モードの影響を顕著に受けることが明らかとなったが,スリット先端の特異応力場を支配するパラメータKにより一義的に表せることがわかった.しかしながら,き裂進展方向の予測は不十分で有り,今後の検討課題となっている. ②リモートレーザー溶接継手については,破壊モードの荷重レベル依存性について焦点を当て研究を行った.十字引張継手を用いた試験において,疲労き裂発生位置は溶接始端であったが,高荷重レベルではその後板厚方向に貫通し,板幅方向に母材部を進展したのに対して,低レベル荷重ではき裂発生後,溶接界面に沿うように進展し,界面破断が生じた.この原因については応力解析を行って解明を急いでいる. ③摩擦撹拌点接合継手に関しては,押し込みツールの形状が上側板に残っているものの,疲労き裂発生板は両板の接合面スリットの先端であることが明らかとなった.き裂発生後,スリット先端に沿う形で板厚方向へ進展,最終的に上側と下側のき裂の合体により破壊することがわかった.疲労き裂発生寿命には荷重レベル依存性が現れ,高レベルでは5%程度の早期であるのに対して,低レベル荷重では30%程度であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績にも記したように本年度はほぼ計画り進展した.スポット溶接継手,リモートレーザー溶接継手,摩擦撹拌点接合継手の疲労破壊挙動に関して3時限的観察システムを構築し,疲労き裂発生・進展挙動を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果において種々の未解明の点が残された. ①いずれの溶接継手においても疲労寿命は,荷重形式の影響を受け,負荷荷重では整理できず,スリット先端の特異応力場パラメータKにより定量的評価が可能であることは明らかとなったが,疲労き裂進展方向が従来の等方均質体に対して提案されている式では評価できないことがわかった.今後は,薄板の大変形を取り込める弾塑性解析を行うことで疲労き裂進展方向を予測できる方法を検討する. ②リモートレーザー溶接継手において,負荷荷重レベルにおいてき裂進展モードの遷移が起こることが明らかとなった.今後はより詳細・高精度の3時限的計測システムの構築と弾塑性解析を組み合わせることで,破壊モード変化の予測法を検討する. ③摩擦撹拌点接合継手に関しては,予備試験として高-低2段変動荷重試験を実施したところ疲労寿命の大幅な延長が認められ,最初に負荷する高レベルによる塑性変形の影響ではないとかの示唆が得られた.今年度はそれらの塑性変形量を実測するとともに解析により塑性変形挙動を明らかにすることにより,それらの影響を受けた疲労き裂進展挙動の3次元的観察を行うとともに寿命予測法の検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の物品の仕様確定が遅れ,今年度中に発注できなかった. 購入予定の物品を購入するとともに,精密測定機器を購入し高精度計測を可能とする.また,疲労試験片の作成などを行う.
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