研究課題/領域番号 |
25289010
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
厨川 常元 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90170092)
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研究分担者 |
水谷 正義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50398640)
嶋田 慶太 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30633383)
今野 豊彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90260447)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微細構造 / レーザ / ポリシラザン / ガラス / プラズモン |
研究概要 |
本年度は主として、加工現象解明に関しての検討を行った。そのためパーヒドロポリシラザンPHPSの小面積塗布を行い、そこにレーザ照射を行って微細構造生成条件の検討を行った。 1.レーザ照射表面の解析方法の確立:具体的には、TEMによる表面の断面形状の測定、TEM-EDSによる表面の元素分布測定、XRDによる結晶状態の測定、FT-IRおよびESCAによる表面の元素量の測定、分光エリプソメトリーによる光学定数の測定、反射率分光法による前駆体膜厚の測定、微細形状測定器による前駆体膜厚の測定のための検討を行った。 2.電磁界シミュレーションの導入:加工表面に発生するプラズモンの解析にむけて、FDTD法を用いた電磁界シミュレーションに関して検討した。溝形成プロセスの中で、プラズモンの強度分布が周期構造形成に影響をあたえていることを解明した。特にプロセス初期段階では溝の底面部にプラズモン強度が集中し溝形成を促進するが、後期段階になると溝の頂部にプラズモン強度が集中し溝形成を阻害することを明らかにした。この知見は、表面構造の形状制御にむけての大きな手がかりになるものと考えられる。 3.加工の進行プロセスの解明:レーザ照射後、まずガラス前駆体内部に周期的な空隙が形成し、次に表層が剥がれて周期構造が露出していくことをTEMによる断面解析の結果から明らかにした。これは通常のレーザ加工と比べて大きく異なるプロセスであり、本加工現象の解明にむけて大きな手がかりになるものと考えられる。またレーザパルス幅が周期構造形成に大きな影響を与えていることを実験的に証明した。0.2~4.3psまでは、周期構造を形成し80psでは形成できない。この結果は、レーザプロセスのコスト低減を目指すうえで重要な情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りであるが、当初の計画では、H25年度に大面積にポリシラザンを塗布する装置の開発(試作)も入っていたが、最初に加工現象解明に関しての検討を先行して行ったほうがいいと判断し、大面積塗布の装置設計のみとなった。ポリシラザンPHPSの塗布に関しては、最初に小面積塗布法について検討し、その知見、並びに予備加工実験の結果を元に、次年度大面積塗布装置の試作を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度では引き続き、塗布したポリシラザンに対してレーザ照射実験、並びに電磁界シミュレーションを行い、微細構造創成メカニズムに関して検討を行う。材料とレーザを変えて照射実験を実施し、形状・物性のデータベースを作成する。これをシミュレーション結果と比較し、現象を解明する。 またH25年度設計検討した大面積塗布装置の試作を行い、塗布性能に関して最適条件設定指針に関して検討する。 さらにモスアイ構造を形成する技術に関して検討する。反射率0.5%以下の無反射効果を発現する微細構造の寸法・形状について設計する。通常、超短パルスレーザ照射では、ライン形状の微細構造が加工されるが、反射防止性能の等方性向上を考えると、ドット構造の形成が必要不可欠である。ドット構造やライン構造などの構造制御には、照射する超短パルスレーザの偏光状態が深く関係していることがわかっている。前述の3次元電磁界シミュレーション結果を元に、照射レーザの円偏光電場とガラス表面の電場状態を制御し、ドット状の表面プラズモン場を生成して緻密で高アスペクトな超微細構造を創成する技術を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、H25年度に大面積にポリシラザンを塗布する装置の開発(試作)も入っていたが、最初に加工現象解明に関しての検討を先行して行ったほうがいいと判断し、大面積塗布の装置設計のみとなったため。 ポリシラザンPHPSの小面積塗布法について検討した後、H25年度に基本設計検討を行った大面積塗布装置の試作のために、H26年度請求額とあわせて使用する予定である。
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