研究課題/領域番号 |
25289011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
割澤 伸一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20262321)
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研究分担者 |
山田 一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70345081)
米谷 玲皇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90466780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 連結ナノ機械振動子 / ハイブリッド構造 / 極低濃度ガスセンシング / 非線形振動特性 / 酸化スズ / アセトン / 呼気ガス分析 |
研究実績の概要 |
ナノ機械素子として採用した両持梁の表面に,酸化物半導体膜を塗布したハイブリッド構造の振動子の振動特性を評価した.振動特性として共振周波数とQ値を取り上げているが,このうち共振周波数がハイブリッド構造振動子の作製プロセスの影響を受けて安定しない課題を解決した.このバラつきに対する議論は,連結ナノ機械振動子を構成する場合にきわめて重要であることから課題解決を図った.具体的には,エッチング液の選定,アニール温度の設定,電極材種の選定,酸化膜除去など,従来の研究事例では個別に議論されているものではあったが,本ハイブリッド構造の作製においてはこれら全てを幅広く検討した.最終的に,同一ウェハでのばらつき,ロットによる共振周波数のばらつき低減を可能とするプロセス及びその条件を決定し,所望の振動特性が得られることを確認した. 両持梁表面に塗布する酸化物半導体膜として酸化スズを選び,その薄膜作製プロセスとガス感度特性評価を実施した.前年度MOD(Metal Organic Decomposition)法では感度が得られなかったことを踏まえ,スパッタによる成膜に変更して,薄膜作製プロセスを検討した.酸化スズ薄膜を10 nmとして,触媒となるPtを表面に成膜し,アニールする.両持梁振動子にパターンニングした酸化スズ薄膜について,1000 ppmのアセトン暴露により純空気比で2.5の抵抗変化率を得た.そこで,Siチップ上に成膜した酸化スズについて,アニール温度,Ptの膜厚,センシング中の駆動温度を変えてアセトンガス暴露に対する抵抗変化計測を実施した結果,純空気比で抵抗変化率6.0レベルの結果を得た.また,作製条件・駆動条件の好適化によって計測ノイズの低減も確認した. 以上により酸化物半導体膜と両持梁とのハイブリッド構造で構成したガスセンサの基本特性を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連結振動子性能に影響を与える共振周波数のばらつきが作製プロセスによることが判明したことから,その課題解決に時間を要した.そのため,ハイブリッド構造としての性能評価が当初の予定に比べて遅れることとなった.
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今後の研究の推進方策 |
作製プロセスが決定し振動特性バラつきに対して課題解決が図られ,酸化物半導体薄膜の作製プロセスも確立できたことから,これらによるハイブリッド構造振動子を利用したガスセンシングの高感度化を中心に据えて研究を進める.グラフェンのガスセンシング機能は単独で検証し,上記ハイブリッド構造振動子へ組込む方策を検討した上で,グラフェンの成果を組込む.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたより消耗品の使用量が少なかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究を加速し十分な実験結果をえるために必要となる消耗品に充てる.
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