研究課題/領域番号 |
25289016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大参 宏昌 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00335382)
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研究分担者 |
安武 潔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80166503)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シリコン / ナノワイヤ / プラズマ / 精製プロセス / ナノマイクロ加工 |
研究概要 |
本研究では、これまで申請者が開発してきた高密度・高圧水素プラズマによる独自の薄膜形成法を発展させ、エネルギー・資源的な無駄の多い従来の精製法(例:ジーメンス法)や成膜プロセス(例:CVD法)を経ずに、廉価な金属級Si(MG-Si)原料から高品質NW-Siを廉価に形成する技術の確立を目的としている。 とりわけ本年度は、 APECT法によるNW-Siの成長条件の検討と形成NW―Siの構造評価、さらにはNW-Siの成長触媒となるテンプレート金属ナノ粒子の形成法に関して検討を加えた。具体的にはNW-Siの成長条件を検討するため、膜厚10nmの金薄膜が付着したSi基板を用いて、NW-Siが形成される成膜条件(プラズマ生成条件、基板温度)を検討した。現段階では、現有装置の性能上の上限である400℃を筆頭に300℃、200℃に基板温度を設定し、200Torr、100%水素雰囲気中でAPECT成膜法を試みた。その結果、基板温度を300℃まで低下させた場合でも、局在したプラズマの境界部においてNW-Siの成長が確認された。この対比実験としてボンベSiH4の供給による300℃での熱CVDを試みたが、一切NW-Siの成長は確認されず、プラズマの存在がNW-Siの低温成長に大きく寄与していることを明らかにした。またTEM観察より形成したNW-Siは結晶化していることが分かった。 一方、テンプレートナノ金属粒子を構成する触媒元素として、Auに比べてSi太陽電池の特性に与える影響が小さく廉価な金属元素を用いることを目的として、InおよびSnを選定し、本研究で用いている高圧力の水素プラズマを用いて、これらの金属ナノ粒子を極めて高速に形成する新たな形成法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、廉価な金属級Siを原料に用い、高純度・高品質なナノワイヤSi薄膜(NW-Si)の形成を可能にするプロセスの開発を目指している。本年度の目標として、APECT法によるNW-Siの成長を確認し、その条件を確立すること、さらにはNW-Siの高速・垂直配向条件の検討を開始することを設定していた。前者に関しては、装置改造により、より高温の基板温度での成膜条件の検討が残されているため、若干の遅れがあると言えるが、後者に関しては新たな電極構造の設計を完了し、ほぼ予定どおりに遂行できていると評価される。また、本年度は、これらの研究と並行して、テンプレート用金属ナノ粒子の新たな形成技術の開発を期間前倒しで行い、その原理実証を終えている。以上の研究全体の総合的な進捗状況を俯瞰し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、高密度・高圧水素プラズマによる独自の薄膜形成法により、エネルギー・資源的な無駄の多い従来の精製法や成膜プロセスを経ずに、廉価な金属級Si(MG-Si)原料から高品質NW-Siを廉価に形成する技術を確立するため、今後は、① APECT法によるNW-Siの高速・垂直配向成長条件の検討、および②NW-Siを利用したMG-Si精製技術の原理実証を主眼においた研究を推進する。 具体的には、項目①に関して装置の性能上これまでできなかった基板温度域での実験を可能とするための現有装置への冷却機構などの改良を加え、より広い条件範囲でのNW-Si成長条件を探索可能な状態にするとともに、これまでに明らかとなっているNW-Si成長条件をさらに最適化すること、さらには設計が完了した新電極を製作実装することによりNW-Si成長速度の高速化と垂直配向成長の達成に向けた成膜条件を検討する。 また、項目②に関しては、 物質のナノサイズ化による精製作用への影響を詳らかにするため、金属誘起酸化エッチング法により任意径のSiナノワイヤを作製し、そのナノ構造体化されたSi中の不純物濃度をバルクSi中のものと比較検証する。さらにAPECT法を用いて様々な条件にてMG-Si原料からNW-Si膜を作製し、NW-Si膜への不純物輸送特性を評価する。とりわけ、NW-Si膜を形成し、ナノ構造特有の性質を利用する今回の試みでは、B、およびP不純物の輸送特性の詳細な把握に力点を置く。このため、B、P濃度が既知のSiウエハを原料に用い、様々な条件にてNW-Si膜を作製し、膜中不純物濃度の定量により輸送挙動を明らかにする。NW-Si膜の各種不純物濃度を評価し、通常Si膜を作製する場合とNW-Si膜を作製する場合とにおける輸送特性の違いを比較検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
金属ナノ粒子の高速形成法の開発を前倒しで実施したため、当初予定していたSiナノワイヤの高速/垂直配向に向けた電極の製作を次年度に持ち越したこと、高周波部品、真空・配管部品等の実験消耗品の交換回数が当初予定していたよりも少数回で終えられたこと、さらには部品の改造により、より小さな基板にて実験可能となった事から、実験回数を維持しながら基板の消費量を抑えられたため。 今後の研究方策として、当初の計画通り① APECT法によるNW-Siの高速・垂直配向成長条件の検討、および②NW-Siを利用したMG-Si精製技術の原理実証を主眼においた研究を推進する。そのなかで上記の次年度使用額は、ナノワイヤシリコンの高速化・垂直配向化にむけて既に設計済みの電極の作製、さらには本年度予定しているシリコン中不純物の輸送特性を把握するために必要な不純物濃度測定の測定サンプル数、および測定対象元素数を補強し、より緻密な輸送特性の解明のために使用する予定である。
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