研究課題/領域番号 |
25289022
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 敏郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209645)
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研究分担者 |
山田 崇恭 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598222)
飯盛 浩司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50638773)
高木 賢太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60392007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 設計工学 / 形状モデリング / フォノニック構造 |
研究概要 |
本研究では,連続体からなる局所的な微細構造に動吸振器の原理を適用し,フォノニック構造の単位周期構造中に埋め込むことにより,高速鉄道や航空機,自動車などで発生する振動や騒音を格段に遮断することが可能な微小周期構造を,数値解析を利用して創成する方法を開発することを目的とした。そのための方法として,有効な振動遮断特性を有する構造を固体中に動吸振構造を有する別の材料定数からなる固体を埋め込んだ周期構造により実現しようと考えた。このような構造を求めるには,それらをモデル化し,弾性波動の透過特性の計算を繰り返す必要がある。全体構造は,単位構造が無限に続く周期構造として考えることが,このような構造の設計理論を確立する上ではまず重要である。 本年度は,この目的を実現するためにまず以下の成果を得た。 まず,本構造の固有振動数を境界積分方程式の離散化手法である境界要素法により解析する方法を開発した。境界要素法では,周波数を含んだ非線形関数の積分により,解析に必要な係数マトリックスが得られるため,得られる固有値問題は非線形固有値問題となる。これに,周波数の複素平面に対する経路積分によって固有値を計算する方法を適用し,境界要素法に基づき固有振動数を計算する方法を開発した。さらに,基本単位構造に周期境界条件を適用した問題に本方法を適用した。その際,擬似固有振動数が解として出現する問題があったが,Burton-Miller法により,超特異積分方程式と通常の境界積分方程式の線形結合を用い,正しく擬似固有振動数を除去することに成功した。 次に,このような局所共振構造のトポロジー最適化を行う上で必要となる目的汎関数のトポロジー導関数の導出を行った。トポロジー導関数を導出する上で,微小空洞や微小介在物に対する無限弾性体の解析解が必要となり,この解を併せて用いることにより,トポロジー導関数を正しく導出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行する上で最大の難関は,周期構造にたいする境界要素法を用いた固有振動数解析法の開発と,動弾性問題におけるトポロジー導関数の定式化,及びこれらを有効に利用して解析を行うために必要な基盤ソフトウェアの開発であった。これに対して,動弾性問題とアナロジーをなすヘルムホルツ方程式対して基本的な考察と解析を行い,境界要素法を用いて固有振動数を解析可能であること,および周期構造に対しても擬似固有振動数を除去することにより正しく固有振動数を計算できることとバンドギャップを計算することができることを示すことができた。本成果の一部は国際会議論文3編,国際学術誌2編の論文,学会発表2回,および担当した学生の学位論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の実績を踏まえ,まず,3次元の局所共振フォノニック構造の境界要素トポロジー導関数解析アルゴリズムと,トポロジー最適化アルゴリズム,およびソフトウェアを整備する。トポロジー最適化は,境界要素法を用いることにより,従来の設計空間の緩和によって生じる中間領域を含まない明瞭な形状表現が可能となることから,動吸振構造が複雑な構造を取る場合についても最適なトポロジーを求めることが期待できる。 次に,トポロジー最適化によって得られた局所共振フォノニック構造の試作解析によって得られた最適な局所共振フォノニック構造の施策方法を検討する。そのためには,実験により実物の振動遮断特性を検証する。実験装置は加振機とレーザー・ドップラーセンサーによる計測器から構成する。試料の作成,実験装置の構成と実験は,研究分担者(高木)が担当する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算サーバーを他の予算と併用して共用施設として購入したため,当初の研究費申請段階のハイスペックの計算サーバーを少し少ない予算負担で購入することができたため。 試作実験で用いるレーザードップラーセンサー等の備品の購入費用に充てる。
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