機械における摺動表面の多くは潤滑油中に晒されており、潤滑下でのトライボロジー現象を真に理解するには、摺動場における固液界面の状態を正確に把握することが重要である。特に、低摩擦(u<0.01)~超低摩擦(u<0.001)特性を有する摺動界面には、摩擦を低減する何らかの境界潤滑被膜が形成されていると言われているが、その物性および挙動はほとんど明らかになっていない。そこで本申請では、サブミクロンオーダのすきまを保ちながら2平板を平行に対向する機構を有する摺動試験機を開発することにより、固体二面に挟まれた境界潤滑被膜の構造解析および力学特性の把握を目指すこととした。また、u<0.001以下の超潤滑特性の発現が確認されているポリマーブラシ型境界潤滑層を対象とし、その超低摩擦摺動メカニズムを明らかとするとともに、より良い境界潤滑被膜形成のための添加剤設計指針を提示することを最終目的とした。 開発した平板対向型狭小すきま摺動試験機を用いて実験を行ったところ、以下の成果が得られた。 1) 狭小すきま試験機によって得られる平板間のすきまは理論値によく一致することを光干渉法により確認した。 2) 試料油が基油のみの場合はすきま長さを変化させても見かけ粘度が変わらない傾向を示した。一方、試料油に吸着性の高い添加剤を混入した場合、すきまが狭くなるにつれて見かけ粘度が低下する傾向を示した。これより、界面で形成された吸着層が界面すべりをもたらす可能性が示唆された。
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