マイクロスケールの細動脈を流れる血流は、血中の体積分率の高い赤血球の物性と挙動に大きく支配されており、高血圧や脳梗塞などの病変と密接に関係があると言われている。本研究では3次元的である赤血球の形状変化や軸集中挙動を計測するため、新たな3次元計測手法である、“デジタルホログラフィック計測(DHM)”の開発を行う。本手法を従来の2次元共焦点マイクロPIV計測と併用することにより、血球の変形やタンクトレッド運動、軸集中挙動および周囲流動を3次元的かつ定量的に計測し、流動メカニズムの解明を目指す。 1年の研究期間延長を受けての最終年度である本年度(4年目)では、主に血球と周囲流体の同時計測に必要な、高倍率でのDHM-PTV計測環境の構築に重点を置いた。その結果、100倍の対物レンズを用いて粒径0.5ミクロンのトレーサ粒子の3次元位置を検出し、さらにポアズイユ流れを計測することに成功した。ただし、0.5ミクロンのトレーサ粒子は光学系の回折限界に近いためシャープな再生像が得られず、流れ場に投入できる粒子濃度の限界が若干低くなると考えられる。 また、血球との同時計測においては、血球とトレーサ粒子がDHMの光軸方向に重なった時に、それぞれによって歪められた位相が重複してしまうため、その影響を検証する必要がある。そこで、似たような状況を再現できる、液滴内のトレーサ粒子のDHM-PTVを行った。赤血球に相当する液滴界面による位相の歪みとトレーサによる位相の歪みを空間周波数フィルタにより分離することで、3次元界面形状と液滴内部流れを同時計測することに成功した。
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