研究課題/領域番号 |
25289030
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 孝二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50274501)
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研究分担者 |
鈴木 博貴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10626873)
酒井 康彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20162274)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流体工学 / 乱流 / スカラー / 混合 / ミキサー |
研究実績の概要 |
①水路を用いた“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の構造とスカラ輸送機構の実験的解明:三次元時系列粒子画像流速計(3D-TR-PIV)と平面レーザ誘起蛍光法(PLIF)を用いて瞬時三成分速度変動と濃度変動の同時計測を行った.種々の格子形状(棒の幅や間隔等)を有する格子を用いて実験を行った.その結果,スカラー拡散(平均濃度の半値幅の広がり)は格子棒の幅でよくスケーリングされることが明らかとなった. ②風洞を用いた“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の実験的解明:フラクタル格子と同様の遮蔽率や格子の太さを有する正方格子を用いて非平衡乱流に関する計測を行い,フラクタル格子乱流の場合と比較検討した.実験の結果,乱流エネルギの散逸定数が一定値をとらない非平衡領域に関して,格子の遮蔽率や太さ等を一致させたとしても,非平衡領域はフラクタル格子乱流の方が広いことが明らかとなった. ③三次元直接数値計算(DNS)による“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の数値的解明:フラクタル格子,およびフラクタル格子の最大格子要素と同じ形状を有する四角格子のDNSを行い,それぞれの乱流特性を詳細に調べた.特に,実験では評価が困難な速度こう配テンソルの第二および第三不変量の相関(Q-Rダイアグラム)や速度変動と渦度変動の内積であるヘリシティを調べ,乱流構造の検討を行った. ④“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の工学的応用に関する研究:微粉炭燃焼器のバーナに着目し,まず,噴流と旋回流の複合場を計算できる数値計算コードを開発した.テスト計算の結果,噴流と旋回流の複合場が再現されていることが確認された.また,同様の場に対応する実験装置を設計・製作し,基本的な流動場をPIVにより計測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究が進んでおり,「研究実績の概要」で示した①~③の研究においてそれぞれ重要な結果が得られた.特筆すべき事項として,風洞実験結果を9月にイタリアで開催された国際ワークショップ「One-Day Workshop: Turbulence Out of Classical Equilibrium in Nature and Engineering and Multiscale- Generated Flows 」の招待講演として,また,数値計算結果を9月に英国で開催された国際ワークショップ「JSPS Supported Meeting on Interscale Transfers and Flow Topology in Equilibrium and Nonequilibrium Turbulence 」の招待講演として発表した.さらに,フラクタル格子乱流と従来の格子乱流との違いを明確にした数値計算結果は,流体力学分野の一流国際誌であるPhysics of Fluidsに掲載された(Zhou, Nagata et al. 2015).このことからも,得られた結果が世界的にみて高水準にあることが客観的に評価される.また,マルチスケール/フラクタル励起乱流”の工学的応用に関しても,旋回と噴流の複合場に関する直接数値計算コードの開発,実験装置の設計・製作を行い,基本的な流動場の計測まで完了させた.他にも,噴流を用いて格子近傍の流れ場で見られる乱流/非乱流界面における物理現象を詳細に調べ,結果を一流国際誌に多数掲載した. 以上を鑑み,研究は当初の計画通りに順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の研究を行う. ①水路を用いた“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の構造とスカラ輸送機構の実験的解明:平成26年度の研究において,レーザシート奥行方向の計測精度が他成分に比べて低いこと,ステレオPIVのカメラ2台とPLIFカメラ1台の撮影範囲の同期が困難であること、が課題として残された.従って,まずはこの点の改善を行う.次に,インペリアルカレッジの研究グループが数値計算結果から提案した“Space-Scale Unfolding (SSU) mechanism”の実験的検証を行う. ②風洞を用いた“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の実験的解明:平成26年度に実施した三次元直接数値計算(DNS)結果から,フラクタル格子乱流の主な特性は最大の格子により決定され,より小さな格子要素は乱流場のより速い一様等方化に寄与していることが判明した.これを実験的に検証するため,最大の四角格子要素と格子幅が小さい正方格子を組み合わせた,“マルチスケール正方格子乱流”の計測を行う.乱流場の特性,特に、非平衡乱流の特性について調査する. ③三次元直接数値計算(DNS)による“マルチスケール/フラクタル励起乱流”の数値的解明:平成26年度の計算に引き続き,フラクタル格子乱流あるいは単一四角格子による乱流について詳細な解析を行う.特に,速度こう配テンソルの第二および第三不変量のラグランジュ軌道を計算し,小スケールの乱流の特性を明らかにする. ⑤マルチスケール/フラクタル乱流の工学的応用技術の開発:平成26年度に開発した計算コードおよび実験装置を用いて,数値的・実験的に流動場を調べる.旋回の強さ(スワール数)等の条件を変えて計算および実験を行う.また,旋回噴流の噴出口近傍にフラクタル格子を設置し,乱流場がどのように変化するのかを予備実験により調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度繰越額が生じたものの,当初の研究計画通りに研究がスムーズに進行した.熱線流速計や熱線プローブ等,自作できるものは極力自作することで研究経費を抑えている.また,レーザカッター導入により,実験で用いる乱流格子も安価に製作することが可能となった.ただし,一昨年からの繰り越しはおよそ85万円であったのに対して,次年度への繰り越しはおよそ53万円であり,今年度の交付金に加えておよそ32万円の支出があった.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き,実験に用いる消耗品や数値計算関連ソフトウェア等の購入や,国内外の会議の旅費・参加費に充てる予定である.特に,2015年7月にはフラクタル格子乱流に関するワークショップがデルフトで開催予定であるので,その旅費に使用する.
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