研究課題/領域番号 |
25289032
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 剛宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252621)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 複雑流体 / 生物流体 / 能動粒子 / 微生物 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
複雑流体として生物系粒子分散系を扱い,その数値流動解析手法の開発を目的とし,(1)モデル微生物粒子を用いた自己組織化構造形成現象の解析およびレオロジー特性の評価,(2)生物系粒子分散系シミュレーションのための連続体モデルの導出,(3)微生物サスペンションの自己組織化構造形成を模擬したバイオミメティクスによる新機能性物質のデザインの3テーマを軸に研究を行ってきた.各テーマにおける成果の概要を次に示す. (1)ではMPCDを用いた走光性微細藻類モデルを用いた数値シミュレーションプログラムの3次元化を進め,計算プログラムがほぼ完成した.今後,このプログラムを用いて,より詳細な流動解析が可能となると考えられる.また,エージェントベースシミュレーションを用いた能動粒子分散系の自己組織化構造のシミュレーションプログラムを作成し,個体間相互作用を規約ベースで表現する手法を検討した.(2)では走光性微細藻類分散系のための連続体ベース解析プログラムを作成し,バイオ燃料製造プロセスに関連する流路内流れやバイオ対流流れを対象に流動解析を行った.(3)では(1)のエージェントベースシミュレーションプログラムを用いて,複雑流体の流動誘起構造との類似性の検討を行い,バイオミメティクスによる新機能性物質のデザインのための準備を行った. さらに,セルオートマトン(CA)法を用いた流動環境下のバイオフィルムの成長現象の解析プログラムの開発を行い,能動粒子間の相互作用として,クオラムセンシングなどの生態学的相互作用を取り入れる際にCA法を適用する方法について検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究課題において開発する数値解析プログラムのベースとなる,走光性を有する微細藻類分散系に対するMPCD(Multi Particle Collision Dynamics)シミュレーションプログラムの3次元版がほぼ完成し,概ね研究計画通りに進行している.また,走光性微細藻類分散系の流動の連続体ベースの解析を行うための数値計算プログラムを作成し,流動解析を行った.研究成果を論文にまとめ,投稿中であり,概ね研究計画通りに進行している.また,個々の生物系粒子の運動をエージェントベース・シミュレーションで計算し,複雑流体の流動内部構造の流動誘起構造との関連性を調べ,微生物サスペンションの自己組織化構造形成を模擬したバイオミメティクスによる新機能性物質のデザインのための方法論に検討の基礎的研究を進めた.さらに,磁性流体を対象としたMPCDシミュレーションプログラムを完成し,流動誘起構造解析に使用する解析プログラムの準備ができ,概ね当初計画に基づいて研究が進行している.さらに,バイオフィルム成長現象の解析プログラムの開発を通じて,セルオートマトン法の適用可能性を検討し,粒子間相互作用の表現方法についても研究を進めた. 平成26年度中に,当該研究課題に関連する成果の学会発表を9件行った.また,論文1編を投稿中である. 以上より,研究は概ね当初計画予定通りに遂行できたと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,(1) 走光性微細藻類サスペンションの数値流動解析,(2) 個体間相互作用を考慮した生物粒子サスペンションの自己組織化構造形成シミュレーション,(3) 微生物モデル粒子サスペンションのMulti-Particle Collision Dynamics(MPCD)シミュレーションの作成,を中心に下記の計画で研究を進める. (1) では,シミュレーションプログラムの3次元化の完成とそれを用いた流動メカニズムの解析を進める.特に,流路内流れと生物対流を対象に解析を行う.(2)では,生物粒子を模擬した個体間の相互作用を取り入れた数値計算モデルを作成し,エージェントベースシミュレーションに基づく自己組織化構造形成の数値シミュレーションを行い,複雑流体の流動誘起構造との類似性について検討する.そして,微生物サスペンションの自己組織化構造形成を模擬したバイオミメティクスによる新機能性物質のデザイン手法の方法論の展開を目指す.(3)では,弾性ダンベルモデルを用いた微生物粒子モデルとMPCDシミュレーションの組み合わせにより,微生物サスペンションの数値解析モデルを作成する.当初予定していた回転楕円体モデルでは,微生物の運動様式の違いの表現が難しいと判断したために,新しいモデルを取り入れて,PullerやPusherなどの運動様式の違いを表現できる解析モデルを作成する.これまでに高分子溶液系でノウハウを蓄積している解析プログラムを活用して,迅速な開発を進める. また,生物系流体,生物関連流動の複雑流体分野における新規研究分野の将来展開のために,生物系流体粒子の能動特性や相互作用を表現する手法のひとつとして検討しているセルオートマトン法を用いて,微生物間相互作用を考慮した流動下のバイオフィルム成長シミュレーションや固体壁への微生物付着シミュレーションのための計算プログラムを開発する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度繰り越し分と合わせた予算で計算機を購入するために、本年度購入分の計算機のスペックの見直しを行ったが、その際に生じた差額および当初計画においてアルバイト利用を予定していたデータ整理等が、現有設備の有効利用により自身で処理できたことによる。また、研究の進捗にあわせて、次年度の国際会議発表計画を追加したため、その経費を未使用金から次年度に繰り越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は、当初予定から追加した国際会議における論文発表のための経費として使用する。さらに、解析に使用するソフトウェアの追加購入とアップデートの経費として使用し、研究遂行の効率化を図る計画である。
|