研究課題/領域番号 |
25289034
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高比良 裕之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206870)
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研究分担者 |
小笠原 紀行 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00552184)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流体工学 / キャビテーション / 気泡 / 圧力波 / 相変化 |
研究実績の概要 |
気泡界面での相変化を考慮したGhost Fluid法を用いて,蒸気泡と集束衝撃波との干渉に関する数値シミュレーションを遂行した結果,シミュレーションにより,実験を予測できることが示された. 集束超音波の焦点近傍に生成したレーザ誘起気泡に,圧力振幅をコントロールした集束超音波を照射し,集束超音波がレーザ誘起気泡の界面で後方散乱する際の,二次キャビテーションの初生と成長を高速度ビデオカメラを用いて可視化した.その結果,二次キャビテーションの初生が界面での圧力波の後方散乱による負圧の形成に依ることが実証された.また,レーザ誘起気泡の体積と二次キャビテーションの成長との関係を調査した.さらに,パルス状の入射波が気泡界面で後方散乱する際の負圧の形成をGhost Fluid法を用いて数値解析した.その結果,負圧領域の形成は,「気泡崩壊の特性時間」と,「入射波の伝播に係る特性時間」の比で特徴づけられること,キャビテーションの初生確率の重要な因子である「負圧領域の体積Ⅴと負圧持続時間τの積」は,上記特性時間の比に対して極大値をとることが明らかとなった.Ⅴτが大きいほどキャビテーションの初生確率が高くなることから,上述の極大値をとる条件は,キャビテーションが生成されやすい条件を表している. 狭い流路内でのレーザ誘起気泡の成長崩壊実験に対応する境界要素法ならびにGhost Fluid法によるシミュレーションを行った.その結果,境界要素法は気泡の成長過程の予測に,Ghost Fluid法は気泡の崩壊過程の予測に有効なことが示された.また,実験とシミュレーションの両面から,流路幅と気泡径との比が,流路壁面に作用する衝撃圧力に及ぼす影響を検討した.その結果,気泡が砂時計形状に成長し流路中央部で崩壊するという中立崩壊の条件では,壁面での衝撃圧力が減少し,壁面損傷が軽減されることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集束超音波を用いたキャビテーションの初生実験において,二次キャビテーションの初生と成長の可視化に成功し,二次キャビテーションの初生が気泡界面での圧力波の後方散乱によることが実証された.また,Ghost Fluid法を用いて気泡界面での後方散乱をシミュレートした結果,負圧領域の形成は,「気泡崩壊の特性時間」と,「入射波の伝播に係る特性時間」の比で特徴づけられること,キャビテーションの初生確率の重要な因子である「負圧領域の体積と負圧持続時間の積」は,上記特性時間の比に対して極大値をとることが明らかとなった.また,狭い流路内で気泡の成長崩壊実験に対応するシミュレーションに成功し,気泡崩壊を数値的に予測できるようになった.その結果,理論・実験の両面から,気泡が中立崩壊する条件下では,気泡崩壊時に流路壁面に作用する衝撃圧力が減少することが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
集束超音波を用いたキャビテーション初生実験においては,二次キャビテーションの体積が,超音波の照射時間の経過とともに,階段状に成長することが示された.この要因をさらなる実験と数値シミュレーションにより検討していく.さらに,生体を模擬したゼラチン壁近傍での気泡と超音波との干渉を実験的に解明していく. 核破砕中性子源の開発に係る研究では,前年度に行った狭い流路内でのキャビテーション気泡の崩壊による壁面損傷に関する実験と数値シミュレーションを継続し,壁面損傷軽減策を提案する.また,次世代核破砕中性子源の開発では,液体水銀噴流中に陽子ビームの照射することにより噴流内に生成したキャビテーション気泡の成長崩壊挙動の解明が問題になっていることから,実験と数値計算の両面から,自由界面を有する流れ場中での気泡の崩壊が,自由界面の安定性に及ぼす影響を調査する.
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