研究課題/領域番号 |
25289037
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 洋介 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (30396783)
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研究分担者 |
鹿園 直毅 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30345087)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 対流 |
研究概要 |
完全発達チャネル乱流場に対して伝熱を考慮した直接数値シミュレーションを実施し,最適制御理論に基づいて壁面吹き出し/吸い込みの時空間分布を最適化した.その結果,伝熱増進と摩擦抵抗低減の同時達成(非相似伝熱促進)を実証した.更に,異なるレイノルズ数域における最適制御入力を精査した結果,いずれのケースにおいても,流れ方向に伝播する進行波状の吹き出し/吸い込みが得られており,その波長は凡そ粘性スケールで整理され,位相速度は主流の30%程度であることが分かった.また,レイノルズ依存性も比較的小さいことが確認された.この事実は,壁面からの進行波状の吹き出し/吸い込みは,非相似伝熱促進に極めて有効な制御指針であることを示している. 次に,受動制御として,非相似伝熱促進を目指した伝熱面形状の最適化アルゴリズムの開発を行った.従来,水平面からの変形量を設計変数とした2次元面形状の最適化はなされていたものの,任意の複雑3次元界面形状を最適化するアルゴリズムは確立されていなかった.そこで本研究では,任意の3次元界面形状を流体と固体を識別する関数で表現し,これを設計変数として,予め決められた目的関数を最大/最小とするアルゴリズムの構築を行い,その実証を行った.これにより,従来の最適化手法では,扱うことが難しい複雑な3次元形状を与えられた目的に応じて,試行錯誤すること無く,数学的に最適化する枠組みが構築された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
能動制御に関しては,壁面吹き出し/吸い込み分布の時空間分布の最適化計算を行い,様々な流動条件や制御入力の強度において普遍的な制御指針を抽出することができた.また,能動制御に関しては,複雑な3次元界面形状を目的に応じて最適化する新たなアルゴリズムを構築した.まずは,2次元伝熱面に対して,従来の手法と今回新たに提案した方法で形状最適化を行ったところ,両者は全く異なる最適化手法であるにも関わらず,得られた最適形状は良い一致を示すことが確認され,今回提案した最適化アルゴリズムの妥当性が確認された.更に,今回の手法は容易に3次元形状最適化へと拡張することが可能であり,既にいくつかの3次元伝熱面形状の最適化を行い,性能向上が得られている.以上より,当初の計画通り順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,25年度に構築された伝熱面形状の最適化アルゴリズムを発展させることにより,乱流に代表される非定常流における形状最適化アルゴリズムの構築を目指す.非定常流では,ある形状の性能は時間積分した値として与えられるため,非常に長い制御対象区間を考慮した最適化が必要となり,既存の最適化アルゴリズムの適用が難しい.本研究では,物理場のシミュレーション結果に基づいて,平均場を記述する乱流モデル,及びそこで用いられるモデルパラメータを決定することにより,物理現象の随半方程式を直接時間積分せずに形状最適化を行う手法の構築を目指す.また,平成25年度内に開発された最適化アルゴリズムによって,新しい伝熱面形状が複数提案されているため,これらの形状の実験実証についても共同研究者,試作メーカと共同して進める予定である.
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