現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書の年度実施計画の項目達成度に対する自己評価結果は以下のとおりである。 1-2:単一微細管のテストセクション製作と実験装置本体の製作--ガラス製観察部を持つテストセクションを製作し、管軸方向局所熱伝達係数分布の詳細把握と気液界面挙動の同時観察を実現した。また熱損失の評価精度を上げて、より高精度な局所熱伝達係数が得られるようになった。|1-3:単成分媒体に関する単一微細管内熱伝達に及ぼす入口流量変動の影響--除熱能力の高い水の気泡成長速度は大きく、入口流量変動の有無によらず、熱伝達は安定しなかった。比較的低熱流束において、周期的に乾き部が生じて限界熱流束状態に達した。 2-1,2-2,2-4:単成分媒体に関する各種条件下における単一微細管のデータ取得--上記理由により水に対するデータの取得範囲はきわめて限定的となった。しかしアルコールの添加により大きな除熱能力をそのままに、安定した熱伝達が実現できることを新たに見出し、1-プロパノール水溶液に対して、出口圧力0.1MPa、質量速度100kg/m^2s、熱流束90-130kW/m^2、アルコール濃度0(水単成分)-10wt%、乾き度0-0.25の範囲で系統的な熱伝達データを取得した。また非共沸混合媒体に固有の物質拡散抵抗に基づく熱伝達低下割合を検証した。|2-3:自己浸潤性混合媒体の性質に関する計算・検討--圧力低下が顕著な微細管内下流に向かって、低沸点成分の優先的蒸発に伴う流体温度の上昇を評価する方法を確立した。また表面張力の変化に着目しながら、気泡成長速度が低濃度域で最小となることを複数のアルコール水溶液に対して示し、アルコール添加により水の流動不安定が回避できることを示した。 大きな除熱能力を持つ水を微細管内で安定的に沸騰させる方法を新たに見出し、高性能冷却の確立に対してきわめて重要な知見を得たので、おおむね順調に進展している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費は,微細管内強制流動沸騰を実用化して高性能冷却システムを開発するに際し,入口流量をほぼ一定に保ったにもかかわらず,除熱能力の高い水で大きな気泡成長速度を伴う伸長気泡発生により,非常に多くの実験条件下で流動不安定が観察されため,実験は流動不安定に基づく熱伝達の不安定を抑制するための具体的方法を見出すことを優先したので,使用額が少なかった.管の姿勢に加えて圧力,質量速度を広範囲に変化させるには至らず,気泡成長速度を低下させて熱伝達を安定させるためのアルコール濃度を細かく変化させる実験が主体となった.これにより熱伝達を安定化させる条件を計算により推定し,次年度に継続して実験を行う. 旅費は,関連研究の発表や調査に際し,適用可能な別費用を充当したため,使用額が少なかった.微細管内での強制流動沸騰における熱伝達の安定化を実現する方法を見出しているので,次年度に海外も含めて発表する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由を踏まえ、平成27年度は以下の予算使用計画で進める予定である。尚、※印は学術研究助成基金助成金の繰越額(計:5,000,000円)を表す。 物品費(4,500,000円, うち※4,000,000円)は主に試験装置の補修および調整費(※2,500,000円)とし、他、配管材料、試験液体等の消耗品(1,780,000円, うち※1,500,000円)とする。国内外の学会発表のための旅費(2,200,000円, うち※800,000円)を、国内旅費として 680,000円(うち※320,000円)、外国旅費として 1,520,000円(うち※480,000円)を使用する。人件費・謝金として計上するものは無い(0円)。その他、会議参加登録費用等として 300,000円(うち※200,000円)を使用する予定である。
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