研究課題/領域番号 |
25289047
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
達本 衡輝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (70391331)
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研究分担者 |
白井 康之 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (60179033)
成尾 芳博 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (70150050)
塩津 正博 京都大学, エネルギー科学研究科, 名誉教授 (20027139)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液体水素 / 熱工学 / 流体工学 |
研究概要 |
H25年度は、高温超伝導導体の設計に必要不可欠であるが、これまでになかった液体水素の強制冷却下での定常熱伝達および過渡熱伝達特性のデータを取得した。供試体はBi系線材を模擬するために、マンガニン製平板発熱体を矩形ダクト流路内の片側に設置した。さらに、MgB2線材の直接冷却のためのCICC導体を模擬するために、円管流路内に直径1.2mmのPtCo線材発熱体を製作した。加熱長さと管径の影響を明らかにするために3種類の円管流路を製作した。H25年度は矩形ダクト型供試体と管径8mm、加熱長さ120mmの円管流路を使用して強制流動下における非沸騰域から膜沸騰至るまでの定常熱伝達特性を圧力(0.4MPaから超臨界圧の1.5MPa)、液温(21Kから飽和温度、超臨界圧の場合は32Kまで)の条件下で、流速をパラメータとして測定した。この円管内のワイヤヒータのDNB熱流束は、同程度の水力的等価直径を有する円管流路ヒータの実験結果に比べて、はるかに大きくなるという結果が得られた。しかし、加熱等価直径で整理すると、研究代表者らが提示した相関式でよく表せることがわかった。さらに、計測系の一部を改良し、指数関数状の発熱上昇率を変化させることにより、強制流動下における過渡熱伝達特性データも取得した(圧力0.7MPa、液温21Kのサブクール液体水素、流速:0.8m/sから5.7m/s)。同一流速の場合、加熱速度が速くなるにつれて、過渡DNB熱流束は大きくなり、実験結果は、定常状態のDNB熱流束からの上昇分として整理できることがわかった。今後、他の供試体や圧力・温度条件での実験を計画している。 液体水素小型の循環ループの詳細設計および安全設計も実施した。さらに、制御システムの設計を実施し、液体水素ポンプの常温のヘリウムガス中で試運転を実施し、性能を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度は、4種類の供試体を製作し、液体水素の熱流動実験は予定通り2回実施できた。実験では2種類の供試体での液体水素強制流動下における定常熱伝達特性を取得し、この実験結果は、加熱等価直径を用いて整理すると、これまでに提示したDNB熱流束相関式で実験結果を記述できることがわかった。次年度に実施する熱伝達相関式の導出に向けて見通しを得ることができた。さらに、過渡熱伝達特性データを取得するために、指数関数状の速い加熱ができるように計測制御系の一部を改良した。圧力0.7MPa、温度21Kの条件での液体水素の強制流動下における過渡熱伝達データを取得することができ、次年度以降の研究の見通しを得ることができた。 液体水素の小型循環ループの増設に関しては、高圧ガス保安法に基づき、基本設計から詳細設計まで実施した。さらに、増設する機器やおよび全体システムに関する安全対策を検討した。詳細設計では、循環ループ内の圧力損失や初期冷却を考慮するために、機器や配管のレイアウトを3DCADを駆使して検討し、最適条件を見いだせた。液体水素ポンプの製作と液体水素ポンプの運転制御シーケンスは、前倒しで実施した。しかし、小型循環ループの詳細設計を行った結果、H25年度に実施予定の流動特性試験に関しては、循環ループ内で実施することが合理的であることがわかり、計画を一部変更し、最終年度に実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、H25年度に引き続き、残りの供試体を用いて、液体水素・超臨界圧水素の強制流動下における定常および過渡熱伝達特性を測定し、その熱流動現象の解明する。さらに、定量的に評価できる相関式を導出する。 次年度は、液体水素ポンプを有する液体水素小型循環ループを製作し、その運転制御システムおよび計測システムを構築する。高圧ガス保安法による変更申請および完成検査に合格した後、試運転まで完了させる。 これまでの実験装置では、その強制流動の発生原理による制約で、長時間の安定な強制流動と臨界温度付近での熱伝達を測定することができなかった。平成27年度には、H26年度に製作した小型の液体水素循環ループに、平25年度に製作した供試体を設置し、広範囲の圧力・温度条件下(圧力:大気圧~1.5MPa、温度:20K~飽和温度)で、長時間の安定した液体水素の強制対流定常・過渡熱伝達特性を測定する。導出した相関式の妥当性の検証も実施する。さらに、これまでに得られた結果をもとに、 MgB2またはBSCCOの線材を用いてCICC導体を模擬した供試体を製作し、この循環ループを用いて、外部磁場を印加した場合としない場合の液体水素の強制流動下における高温超伝導線材の過電流特性とその性能限界、過渡常伝導発生・伝搬特性を測定する。さらに、数値解析によるアプローチも行い、それらの物理現象を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に流動実験のために購入予定であった圧力計は、循環ループの詳細設計により、循環ループに組み込んだ方が合理的であることがわかったために、次年度に購入する予定である。 循環ループの制作時に流動特性を測定するための圧力計や温度計を購入する費用として使用する。
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