研究課題/領域番号 |
25289049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 公彦 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (90325241)
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研究分担者 |
中村 弘毅 神奈川大学, 工学部, 助手 (50710141)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 力覚支援 / 状態推定 |
研究概要 |
ハプティックガイダンスステアリングの制御器設計法を検討した。制御器においては、図目標軌道に対して、横方向の偏差と車体の速度の方向と軌道の角度偏差をフィードバックして、アシスト操舵トルクを決めている。10名の実験協力者を得て行ったドライビングシミュレータ実験によって、そのフィードバックゲインの適切な値を検討した。片側1車線道幅6mの道路において、右左折をそれぞれ10回づつ繰り返すコースを,音声による暗算タスクPASATを課されない通常状態(Normal)と課される状態(PASAT)で運転を行う.アシストトルクを小さい順に、弱、中、強と定め、実験を行い、PASATが課された状態の方が効果はあること、また、アシストトルクは必ずしも大きいほど良いわけではなく、人によって適切な大きさが異なることがわかった。 力学支援操舵を,交差点および車線変更等における進路誘導に利用することも提案し、交差点右折前に車線変更を誘導するシーンを考えた。交差点停止線の手前500mに到達した時点で, 3秒程度の音声による車線変更の指示がだされ、運転者はその指示のもと車線変更を行うが,この音声指示と同時に,隣の右側車線の中心線を目標軌跡とする力覚操舵支援を機能させる.5名の実験協力者の協力を得て,ドライビングシミュレータ(以下DS)による実験をおこなった.ハプティックガイダンスステアリングによって、車線変更のタイミングは早くなること、また、その効果は、必ずしもトルクが大きいほど良いのではなく、個人差があることが分かった。 それ以外には、グリップ力センサを購入し、センサ出力の検定を行った。これにより、緊張度、ハンドルを握る力、ハプティックガイダンスステアリングによるドライバーステアリング系の剛性の関係を調べることができるようになる。ドライバの状態推定の可能性検討を実験に入る準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は次の3点を目的にしていた。1.ドライビングシミュレータにて、実車に近い感覚のハプティックガイダンスステアリングを実現し、実験に活用する。2.アシストトルクを受けた時のドライバの応答を調べ、より良い制御器設計指針を得る。3.平成26年度にドライバ状態監視の実験を行えるよう、グリップ力センサの購入等、実験の準備を行う。 1については、計画通りハプティックガイダンスステアリングを実現可能なDSを作成し実験に利用した。2については、片側1車線道幅6mの道路において、右左折をそれぞれ10回づつ繰り返すコースを作成し、アシストトルクを小さい順に、弱、中、強と定め、実験を行い、PASATが課された状態の方が効果はあること、最適なアシストトルクは人によって異なることを示した。効果のあるハプティックガイダンスステアリングを行うためには、個人差を考慮する必要があり、アシストの効果をフィードバックする適応型の制御を行うことが求められることがわかった。制御器設計指針を得るところまでには達していないが、制御方法の進化すべき方向性をみつけることができた。3については、グリップ力センサの購入し、検定を行い、センサ特性の把握に努めた。また、ステアリングが出すトルクと操舵角の関係から、ストレスの有無によって、ドライバーステアリング系の剛性が変わることを確かめた。また、ハプティックガイダンスステアリングによって車線変更等のアシストを行うことを提案し、その効果をDS実験を通じて示した。最適なアシストトルクは人によって異なるなど、目標軌道追従と同様の傾向があることがわかった。提案するシステムの新たな活用法を見出すことに成功した。 このように、目的を概ね達成した。また、新しいハプティックガイダンスステアリングの活用法を提案するなど、今後、研究を発展させる余地もある。
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今後の研究の推進方策 |
ハプティックガイダンスステアリングによるドライバの状態推定の方法を検討する。申請者を含む研究グループは、緊張して運転している場面においてはステアリングを持つ腕が固くなる、すなわち、アドミッタンスが低下することを示したが、この手法を発展させてハプティックガイダンスステアリングを行っている際のドライバの状態推定を行う。PASATによって注意力が散逸された状態、疲労した状態、片手で運転している状態等を推定する可能性を検討する。また、最も効果のある支援トルクには個人差があり、運転環境等によっても変化することが考えられることから、適応型制御を用いることを検討する。上記の方法によって推定されたドライバ状態と、車の走行軌跡から、制御ゲインを変化させ、最も効果的な支援トルクを提供する。これにより、ドライバの状態、スキル、道路環境等に応じて効果的な運転アシストができるようになる。ただし、人間の要素をフィードバックさせるため、既存の適応制御則では対応できない。ドライビングシミュレータによって、ドライバの状態推定および適応型ハプティックガイダンスステアリングの性能評価を行い、実験結果を積み重ねることによって、目的を満たす制御手法を探し出していくことが求められる。また、定められた車線に追従するアシストのみではなく、車線変更などのより高度な運転シーンへの適用、また、ナビゲーションを行うなどの新たな活用方法の探索も行う。 また、DSと実車両の運転との間には、差がある可能性は否定できない。今後は、DSのみではなく実験車両によって、提案する手法の有効性を検討する予定である。H26年度には実験車両の購入を予定している。H27年度以降には、実車両を用いた実験を行い、DSで検討してきた結果の妥当性を検証することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ソフトウエアライセンス料及び被験者実験の回数が想定より少なかったので、次年度使用額が生じた。 今年度実車実験を行うにあたり準備その他で支出が見込まれ、それに充当する予定である。
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