研究課題/領域番号 |
25289055
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
石田 寛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80293041)
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研究分担者 |
遠山 茂樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20143381)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / マルチモーダルインターフェース / 数値流体力学 / 計測工学 / 能動センシング |
研究概要 |
本研究では、爆発物探知犬のように匂いを嗅ぎ回り、危険物やガス漏れ箇所、環境汚染源を迅速かつ確実に探索するロボットシステムの開発を目指す。匂い・ガスは揺らぎを含んだ風に運ばれて広がり、複雑な形状の分布を形成する。本研究で提案するガス源探知マスターロボットは、ガスを検出する能力を持つだけでなく、レーザスキャナを使って室内環境の三次元形状を計測し、赤外線カメラを使って壁面温度分布を測定する。収集したデータを用い、数値流体力学シミュレーションを行って室内の対流場を求め、気流に運ばれて広がるガスの分布を予測しながらガス源を探索する。今年度はロボットのハードウェアを作製し、与えられた室内環境において部屋の三次元形状と壁面温度分布を計測する実験を行った。得られたデータに基づいて数値流体力学シミュレーションを行い、室内に形成される気流場を計算により求めることができた。 また、屋外のように風の乱れが特に強い環境に対応するため、気流操作用スレーブロボットを製作した。このロボットは小型ファンを搭載しており、隊列を組んで定常的かつ一様な気流場を作り出す。あらゆる環境に対応可能なガス源探知マスターロボットの実現は困難であるが、気流操作用スレーブロボット群が気流場を整えれば、ガス源の探索が容易になる。微弱な自然対流場が形成された実験室や、吹き抜けのある室内ホールに実際にファンを配置して環境を整える実験を行い、マスターロボットによるガス源探索が容易になることを確かめた。 さらに、操作者がガス源探索ロボットを支援することを可能にするため、嗅覚アシストマスクや嗅覚ディスプレイの開発を行った。嗅覚アシストマスクは、匂いを増強して操作者に提示する装置である。人間にはほとんど感じられない希薄な匂いであっても、本装置を装着すれば匂いの空間分布を辿ることができ、ガス源探索が可能になることを実験的に確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)ガス源探知マスターロボットの開発、(2)気流操作用スレーブロボット群の開発、(3)操作者とロボットの協調を可能にするインターフェース(嗅覚ディスプレイ及び嗅覚アシストマスク)の開発に取り組む。いずれの課題においても当初の計画における今年度の目標を概ね達成し、試作した装置を用いてその有効性を実験的に示すことができた。従来は、複雑な現実環境に対応できるようにガス源探知ロボットを高度化する研究が行われてきた。一方、本研究で今年度に行った実験により、簡易な構造のスレーブロボット群を使って環境を整えば、ガス源探索が容易になることが示された。ガス源探知ロボットの適用可能範囲を大きく広げる成果であると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ガス源探知マスターロボットに関しては、ロボットが計測した三次元形状と壁面温度分布に基づき、室内対流場の数値流体シミュレーションを自動的に行うソフトウェアの開発を進める。気流操作用スレーブロボット群に関しては、環境に応じてロボットを適切に配置するアルゴリズムを構築する。室内の天井付近でガス漏れが発生した場合、当初に提案したガス源探知システムでは、ガス源位置を正確に突き止めることができない。そこで、三次元的にガス源の方向を判定可能なセンシングプローブを開発すると共に、小型飛行ロボットによるガス源探索の可能性も検討する。嗅覚アシストマスクに関しては、増強した匂いを提示しながら被験者にガス源を探索してもらう実験を行い、その有効性を示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度において得られた様々な研究成果を取りまとめ、国際会議で発表を行う。当初は、嗅覚アシストマスクに関する研究成果をまとめ、平成26年3月に開催される国際会議IEEE Virtual Reality 2014で発表することを計画していた。しかし、ガス源を探索するロボットシステムについてより重要な実験成果が得られたため、これをとりまとめて次年度の平成26年5月に開催される225th Electrochemical Society Meetingで2件の発表を行うように計画を変更した。このため、平成25年度における外国旅費の一部を使用せず、平成26年度の外国旅費を追加で必要としたために次年度使用額が生じた。 当初の研究計画に加えて、アメリカ合衆国において平成26年5月に開催される225th Electrochemical Society Meetingで2件の発表を行う。7日間の海外出張旅費を2名分計上するため、620,000円の外国旅費が平成26年度に追加で必要となる。次年度に使用することとした金額は、この外国旅費の支出にあてる。
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