研究課題/領域番号 |
25289061
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
佐野 明人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80196295)
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研究分担者 |
池俣 吉人 帝京大学, 理工学部, 講師 (70467356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 受動歩行 / 受動走行 / 力学機序 / ヒト規範型 / ロボット |
研究概要 |
本研究では,受動的な力学機序(力学メカニズム)を活かし,ヒト歩容を規範とした歩行・走行ロボットを開発することを目的とし,最終的にヒトっぽい歩行から脱却し,格段にヒトに近い歩行を達成する. 平成25年度は,まずヒト形足に着目して,瞬間的でない脚の切換え現象を力学的に検討し,両脚支持期を有するヒト規範型歩行を実現した.通常の受動歩行は,脚の切換えが瞬間的に行われるが,本研究では,両脚支持期をヒトに近い足で実現したことに意義があり,他に類がなく優位性が高い.また,足首トルクの設計手法がある程度確立した.なお,足機構は,着地の衝撃を繰り返し受けることから,耐久性を高め確実に機能させた.また,最も簡単なヒト歩行モデルにより自由歩行を再現した. 次に,着地前の遊脚大腿部保持が,脚切換え直後の上体鉛直保持を力学的に担保するメカニズムになっている.また,上体鉛直保持トルクは,支持脚の前方転倒を促進するため,ポテンシャルバリアを越え易くなる.さらに,遊脚大腿部保持トルク(能動化,エネルギー供給)を与えることで,結果的に平地歩行が可能になることを見出した.なお,アシスト平地歩行ではあるが,模擬的にエネルギーを供給し,上記3特性の同時達成が可能であることを確認した. 受動回旋骨盤の本格的な開発に備え,予備的な実験のための試作機を開発し,腰軸を左右独立にしてバネ要素で前後保持しただけの骨盤機構のシミュレーション解析を行った.その結果,骨盤のバネ定数,粘性係数,腰慣性の調整だけでは,ヒトのような回旋は生成されないことを明らかにし,脚と骨盤の連動によりヒトと類似する特徴・移動量の骨盤回旋が可能であることを見出した.また,ヒト規範型走行に関しては,1本の紐だけでヒトが上方から操作(牽引)するアシスト受動走行により,走行現象を多角的に検討できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,一から独自開発する歩行・走行ロボットで研究を推進しており,本年度も,実機開発ならびに実機実験を積極的に行い,その有効性を実証した.たとえば,アシスト受動歩行・走行では,ロボットのダイナミクスを体感し,パフォーマンスレベルの評価を行った.また,スロープ上で100歩を超えるヒト足による連続歩行実験に成功した.さらに,ヒト歩行を熟知した理学療法士の方々にも,達成した歩容が歩行リハビリテーションで目指すべき一つの理想形態とのコメントを頂いた.また,実験スキルをもった複数の大学院生を中心に,数体のロボットを並行して運用し,開発スピードを上げた.なお,一貫して力技の能動制御は避け,受動的な力学メカニズムを最大限活かす試みを行っており,今後の統合化も視野に入っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,試作検証レベルから意匠性も考慮した本格運用レベルの実機に昇華させることで,信頼度・安定度を格段に向上させ,より長時間での歩行を実現する.そこで,すでに得られた知見を元に早めに本格設計の準備に入る.また,開発予定の機構を使い3次元歩行へ自然に拡張できるかも検討し,格段にヒトに近い歩行を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
数体の試作機(ロボット)に対して,ラピッドプロトタイピングを活用し,機構改良を高効率・低予算で繰り返し行った.並行して実機実験を行い,機構の妥当性・有用性を多角的にチェックした.本格的な設計開発以前に,これらの開発ループを予定よりも入念に実施したため,次年度使用額が生じた. 次年度は,試作検証レベルから意匠性も考慮した本格運用レベルの実機をプラットフォームとして使用するため,すでに得られた知見を元に早めに本格設計の準備に入る.
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