研究実績の概要 |
本研究では,受動的な力学機序(力学メカニズム)を活かし,ヒト歩容を規範とした歩行・走行ロボットを開発することを目的とし,最終的にヒトっぽい歩行から脱却し,格段にヒトに近い歩行・走行を達成する.特に,次のようなヒト固有の特徴に着目している.(1)瞬間的でない脚の切換え現象,(2)着地前の支持脚の倒れ込み抑制と遊脚大腿部の姿勢保持,(3)骨盤の回旋運動と効率的な蹴り動作,(4)効率的なエネルギー供給と利用. 本年度,歩行では,足部機構を独自開発し,よりヒトに近い歩行を実現した.まず,ヒトの拇指球・小指球に相当する箇所に弾性体を取り付け,ワイヤ張力を利用して弾性体の剛性を変化させ,踏ん張り動作を実現した.その結果,拇指球弾性体により前傾の抑制効果が現れると同時に,膝折れの抑制効果も見られた[(1),(2)].また,足首ロール軸周りの自由度凍結を解除し,弾性体ウレタンシートを配置した.その結果,左右方向の揺動が抑えられ,センタを維持し続けようとする現象が見られた.なお,実験的研究だけでは限界があり,モデルによる解析が重要となる.そこで,3Dリムレスホイールの運動を2次元運動に分けてモデル化するのではなく,3次元運動としてモデル化し,脚運動および脚の切換え現象を確認した.また,3次元歩行機および平地歩行機を機構的にインテグレーションする道筋を付けた. 走行では,まず,伸張反射を有する手動型の足部ワイヤ駆動機構により,効率的にスロープ面を蹴ることが可能となった[(3),(4)].また,ワイヤ拘束機構(受動的力学機序)により,上体鉛直保持,脚の振り出し抑制・着地時膝伸展保持,さらに両脚連動を同時に実現することで,極めてヒトに近いインパクトのある走行を達成した.以上のことから,将来の能動化に向けての基本的な設計指針が明確にできた.
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