研究課題/領域番号 |
25289065
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
和田 隆広 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30322564)
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研究分担者 |
井上 恒 香川大学, 工学部, 助教 (90624205)
関本 昌紘 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 講師 (40454516)
保原 浩明 独立行政法人産業技術総合研究所, デジタルヒューマン工学研究センター, 研究員 (40510673)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大腿義足 / 慣性特性 / 運動制御 / バイオメカニクス / 動作解析 |
研究実績の概要 |
1.義足階段昇段のスキル同定手法の構築 (1) 慣性利用度の評価手法:慣性利用度の観点については,腕部と立脚膝部の動作を考慮した8関節モデルへ拡張し,その有効性を実験的に示した.当該指標を用いて健常者階段昇段実験結果を解析し,全身慣性利用に関し,つま先高さの最高点付近では再現性があることを示した. (2) 大腿義足使用時のスキル評価:運動習慣のある大腿切断者2名の平地歩行・走行および階段歩行計測を行った結果,スムーズな歩行・走行動作が可能な者でも膝継手の膝折れおよびクリアランス不足により,交互昇段ができないことが確認された.一方,我々が開発している階段昇段可能なパッシブ義足膝継手の試作機を用いて,大腿義足ユーザで階段昇段実験を行った結果,交互昇段に成功した.立脚期では義足側において,健常者よりも大きな股関節伸展モーメントと同モーメントの正のパワー発揮がみられた.このような股関節モーメントのパワー発揮の大きさとそのタイミングは,パッシブ膝継手での昇段にとって重要なスキルであると示唆された. 2.イナーシャマッチングに基づく義足膝継手の制御手法の構築:時間反転積分を導入することで,指定した時刻において指定した関節角度,関節角速度を実現する,運動方程式の経由点問題を定式化し,健常者に近い歩容を慣性運動のみで構成できることを明らかにした.本手法は歩行速度が変化した場合でも対応可能である.さらに導出された制御則を試作した動力膝継手に実装し,実験によりその有効性を確認した. 3.階段昇段用大腿義足の試作:開発中の階段義足が立脚期において満たすべき股関節力の要件を明らかにした.また健常者の股関節間力を動力学解析により特徴付けを行った.そのギャップを埋めることで歩きやすさに繋がると考え,膝部と足部が連動して動作する義足を試作し,その有効性をバイオメカニクス解析により明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スキル同定については,当初予定していた,慣性運動利用度の観点のみならず,関節モーメントや関節間力などバイオメカニクス的な観点からも評価を行い,スキルに関する重要な知見が得られた.スキル同定のcriteriaまでは到達しなかったという点で少し遅れたが,予定外のスキルに関するバイオメカニクス知識を得られたことから,概ね予定どおりの進捗であると判断する. またイナーシャマッチングに基づく義足膝継手の制御手法については実験的に有効性を確認したため,当初の予定通りの進捗である. 加えて,本来は最終年度に行う予定であった,試作義足のバイオメカニクス評価について,既に一部成果を得ている点もある. 以上から,全体として,予定以上の進捗と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
スキルについては,義足ユーザによる階段歩行データを,バイオメカニクスおよび,慣性誘発度の観点から解析を進め,スキル同定手法に道筋を立てる.またその成果を,階段昇段用義足の設計手法および,制御手法に展開する.以上の研究を,工学およびバイオメカニクスを専門とする研究チームによって推進することで,最終的に本研究プロジェクトの目的である,階段昇段におけるスキル同定と,それに基づく階段昇段義足の設計と制御手法を確立する.
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備考 |
【受賞】 日本機械学会 中国四国支部賞 技術創造賞、階段昇段可能な受動機構による大腿義足の膝継手の開発、2015年3月6日
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