研究課題/領域番号 |
25289067
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
一ノ倉 理 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20134017)
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研究分担者 |
中村 健二 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70323061)
後藤 博樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90374959)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | SRモータ / インホイールモータ / アキシャルギャップモータ / 電気自動車 / 騒音低減 / 高トルク密度 / 最適構造 |
研究概要 |
環境対策と脱化石燃料から,ハイブリッド自動車や電気自動車の普及は急務であるが,キーとなるのは二次電池,モータ,およびインバータなどの要素技術である。電気自動車の性能を左右する二次電池の性能向上は喫緊の課題であるが,資源的な制約から希土類元素をなるべく使用しないモータの開発も重要課題の一つに挙げられる。スイッチトリラクタンスモータ(以下SRモータ)は,回転子に巻線がなく永久磁石も使用しないため,希土類フリーモータとして期待されるが,トルクリプルと騒音が大きく,希土類(ネオジム)磁石モータと比較して効率や出力密度も小さいという課題を抱えていた。 申請者は,回転子ならびに固定子の形状について種々検討を行い,ダブルロータ構造のアキシャルギャップSRモータにすれば,通常のラジアルギャップ方式のSRモータと比較して出力密度が1.7倍程度向上することを見出した。本研究では,このようなSRモータの最適形状と最適制御法を確立することによってさらなる性能向上を図り,小型のインホイールダイレクトドライブ電気自動車用として実用可能なアキシャルギャップSRモータの開発を行うことが目的である。 平成25年度の研究では,前述した目的を達成するために,シミュレーションベースでアキシャルギャップSRモータの極数や極形状などの設計パラメータの最適化を図り,同体格の希土類磁石モータと同等以上の性能を達成可能なSRモータの設計を達成できた。 また,モータの駆動方式についても検討を加え,通常のオンオフ制御に加えて,還流モードというスイッチングパターンを導入することによりトルクリプルと騒音の低減が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,昨年度の研究において,(1)アキシャルギャップ型SRモータの最適形状の検討,(2)アキシャルギャップ型SRモータの最適駆動方式の検討,(3)アキシャルギャップSRモータの支持機構の検討について行う予定であった。 (1)については有限要素法による磁界解析のほかに,申請者が提案したRNAによる高速モータ解析手法を駆使して最適形状を探索した結果,予想以上に高性能で,希土類磁石モータと同等以上のトルク密度を発生可能なモータ形状を明らかにすることができた。また,トルクリプル低減についても一定の効果をあげることができた。さらに,アキシャルギャップSRモータの最適な直径-軸長比も明らかにすることができた。 (2)については,アキシャルギャップSRモータの駆動方法は,ラジアルギャップSRモータと同様であるが,設計したアキシャルギャップSRモータでは固定子極と回転子極の断面形状が異なるものとなったため,最適駆動方式についても検討を行い,従来の提案最適駆動方式を基本として,アキシャルギャップSRモータの制御方法を考案した。ラジアルギャップSRモータに比較し,アキシャルギャップSRモータでは制御パラメータの自由度が若干あがり,これを利用して還流モードというスイッチングパターンを導入することによりトルクリプルと騒音の低減が可能であることを見出した。 (3)について,アキシャルギャップSRモータは軸方向の電磁力が極めて大きくなるため,支持機構の検討も重要な事項である。本研究では,軸方向の電磁力が互いに打ち消されるように,ダブルロータ構造を採用し,固定子の支持構造が複雑になるためできるだけシンプルで十分な強度が確保できるような支持機構についても検討を行い,構造を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ,今後は研究推進方策として,以下のとおり進めていく予定である. 平成26年度はインホイールダイレクトドライブ方式の1人乗り小型電気自動車に適用することを前提として,アキシャルギャップSRモータの基本設計を行う。また,平成25年度に提案した最適駆動方式を実現するための駆動回路と制御基板の設計を行う。制御基板はFPGAを用いることによりシンプルでフレキシブルな取り扱いが可能なようにする。トルクリプルと騒音の低減のための制御が可能なように,モータドライバのハードウエアとソフトウエアの設計開発を行う。さらに,現有のトルクメータとパワーアナライザなどの測定器を用いて,モータの測定ベンチを構築し,試作したSRモータのトルク速度特性や電流特性を詳細に測定する。あわせて,騒音と振動を測定して,制御による低減効果も検証する。これらの結果からアキシャルギャップSRモータの設計指針を確立する。 最終年度である平成27年度は前年度の検討結果に基づき,小型電気自動車仕様のアキシャルギャップSRモータとその駆動回路を製作する。インホイールドライブにはモータが2台必要になるが,1台は26年度に製作したモータを利用し,もう1台を外注する。また,製作したモータならびに駆動回路を電気自動車に実装し,走行試験を行う。これらの結果からアキシャルギャップSRモータを電気自動車に実用するために必要な事項を明らかにする。以上より得られた成果は電気学会,日本磁気学会の研究会ならびに学術講演会,あるいはIEEE主催の国際磁気学会,国際パワーエレクトロニクス学会等で発表するとともに,成果をとりまとめてこれらの学会誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 駆動回路の性能向上のため,当初の計画より高い性能の制御用デバイスの購入を行う予定である。
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