研究実績の概要 |
最終年度である今年度は、これまでの研究成果をもとにして、真空紫外エキシマランプを用いた活性種生成装置を作製した。これを用いてOH, O3, H2O2を測定し、自作の反応シミュレーションとの結果を比較し、良い一致を示すことを確認した。その結果、本手法が簡易なシミュレーションで活性種密度を予測でき、かつ活性種密度を容易に制御できる手法であることを示すことができた。 このエキシマランプを用いた本手法は、医療効果の高い活性種であるOH, O3, H2O2, O2(a)などを生成できるが、O原子を生成できない欠点があった。今年度はこのO原子を生成する手法も新たに開発した。O3/He混合気を波長248nmのエキシマレーザーで照射して、O3をレーザーパルスで瞬時にO原子に解離する手法である。本手法の実証実験を行い、本手法が実現可能であることを示した。この結果はJournal of Physics Dに掲載された。 本研究の最終目的である本手法の医療への適用について、本手法で生成したOHラジカルを寒天培地上の芽胞菌に照射して、OHラジカルで殺菌することに成功した。この成果により、本手法が医療に適用できる可能性を示すことができた。さらに、これまで前例のない「OHのような短寿命ラジカルによる医療効果の定量的な計測」を行い、OHラジカルをどれだけのフラックスでどれだけの時間菌に照射すると、どの程度殺菌できるかを測定する実験に成功し、活性種を用いた医療の原理解明に向けて大きく前進することができた。この結果は、現在Journal of Physics Dに投稿中である。
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