研究課題/領域番号 |
25289072
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊田 亜紀子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20313009)
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研究分担者 |
松岡 成居 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10114646)
日高 邦彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90181099)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インバータサージ / 電界緩和 / 繰り返しインパルス / 回転機 |
研究実績の概要 |
昨年度に開発した、コイルバーのコロナ防止システムにおける電界分布、表面温度分布測定装置を用いて、現在主流のSiCテープを利用したコイルバーを対象に印加電圧波形(正弦波交流、方形波交流、PWM、雷インパルス、インバータサージを含むPWM)をパラメータに電界分布、温度分布の測定を行った。 平行して材料の抵抗率の温度、電界依存性特性を考慮した、電界分布、温度分布の有限要素法による連成解析を行い、各種電圧波形印加時における電界、温度分布を再現できる解析手法を確立した。また、印加電圧の周波数成分に応じて、発熱、高電界部位が変化する様子を、等価回路モデルで説明することにも成功した。本等価回路モデルは、コロナ防止システムの特性をより直感的に理解する手助けとなる。上記の有限要素法による解析では詳細を知ることができ両者は補完する関係にあるといえよう。 なお、部分放電計測も行った。その結果、パルス放電電流を測定する手法と、放電発光を観測する手法の両者をこころみたが、コイルバーでは、前者は、主絶縁内部の放電か、コロナ防止システム表面での放電かを判別するのが難しく、後者のほうがより信頼性のあるデータが得られる見込みを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、SiCテープを利用したコイルバーを対象に各種電圧波形下の電界分布、表面温度分布、部分放電発生様相の実験データベースを作成する予定であった。電界分布、表面温度分布のデータベースの作成は終えたが、部分放電については測定手法を見出す点までは達成したがデータベースの作成は途上である。 なお、平行して最終年度で行う予定であった有限要素法による電界・温度分布連成解析手法については1年前倒しで取り組むことができ、その骨格の開発を終えている。併せて、等価回路モデルにより、印加電圧波形の「きわめて高い周波数成分(数100kHzオーダ以上)」「高い周波数成分(数K-100kHz)」「商用周波数成分」がコイルバーのどの個所の発熱・高電界形成に寄与するかを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
形状・材料物性をパラメータとして変化させた各種サンプルコイルを対象に、電界分布、表面温度分布、部分放電発生様相の実験データベースを作成する。特に、コイルバーの部分放電発生時の沿面電界を明らかにし、コイルバーの絶縁設計の指針を得る。 平行して、開発した表面電位分布測定システムの、ターン間絶縁測定やパワーモジュールの絶縁測定への適用可能性を検証や次世代の材料開発に必須の沿面放電による絶縁材料劣化特性の把握にも取り組む予定である。 これらの結果をもとに、インバータ駆動機器の対電圧向上に向けた解決策の提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、部分放電を電流パルスを測定しその周波数成分を解析することで行う予定であった。他課題で使用している部分放電パルス測定装置で、準備実験を行ったところ、電流パルスからでは、主絶縁の放電による電流か表面の沿面放電による電流かを識別することが難しいことがわかり、部分放電計測装置の購入を見送った。その後の検討で、コイルバー表面での部分放電発生位相・電圧の測定は、放電発光をより安価なフォトマルとレンズ系で測定することで対応できることがわかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、新たにターン間絶縁測定用センサの試作や、より高電圧の測定を可能としたセンサの試作を行い、本測定手法の適用範囲の拡大可能性を検証する。インバータ駆動機器の絶縁上の弱点に総合的に取り組むことにより、インバータ駆動機器の対電圧向上に向けた解決策を提示したい。
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