研究課題/領域番号 |
25289075
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
下村 直行 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (90226283)
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研究分担者 |
宇都 義浩 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20304553)
寺西 研二 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (80435403)
山中 建二 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (40641155)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオエレクトリクス / がん / パルス電界 / パルスパワー / in vivo |
研究実績の概要 |
パルス高電界による新たながん治療方法の確立に向けて,発育鶏卵法により形成される固形腫瘍にパルス高電界を印加するin vivo実験を実施してきた。発育鶏卵法を採用する利点は,in vivo実験でありながら,一般の動物実験に比べて多数の実験が可能なことである。本年度の主な研究項目は,さらに実験数を増加させて実験条件の最適化を推し進めることと,機序の解明に向けての実験である。 発育鶏卵法を用いたパルス電界印加実験を継続して実施した。今年度は鶏卵の死亡率が高く,十分な試料数を確保できず,また形成される固形腫瘍の大きさのばらつきも大きかった。実験条件最適化については,昨年度までに得られた最適条件を確認した。一方,比較的大きく異なる条件の探索は,試料数の問題でデータの信頼性が不十分であり,有意性のある結果は得られなかった。鶏卵の死亡率と固形腫瘍のばらつきは,気候や天候,親鳥の年齢など鶏卵供給側あるいは供給時の問題および腫瘍細胞の状態によるものと判断された。 機序の解明については,試料数が少なかったため細胞切片を用いたアポトーシス試験に代えて,フローサイトメトリーによる試験を実施した。まず実験系を確立するために腫瘍細胞に対してin vitro実験を実施し,パルス電界印加条件の死亡率に対する有意性を評価した後,FACSによる評価を実施した。これによりアポトーシスの誘導が確認された。次に発育鶏卵法による固形腫瘍に対してパルス電界印加実験を行い,これから得られる腫瘍細胞をFACSにより評価した。こちらでもアポトーシスの誘導が確認された。一方でアポトーシス誘導剤による試験結果とは異なる傾向となる興味深い結果であった。また機序の解明のために異なる実験系を用いて,多面的な解析の準備を進めた。パルス電界の小胞体ストレス応答に対する影響を検討するもので,これまでのところ細胞の種類により大きく影響が異なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に有効な試料(鶏卵)数の確保等の問題で,今年度の実施項目としていた,最適実験条件の探索は十分には進まなかった。パルス電界印加と抗がん剤の併用効果に関する実験も同様の理由で実施できなかった。マウスに対するin vivo実験は,管理区域の問題で実施できなかったが,一方で実施可能であったマウスを用いた小胞体ストレス応答に関する実験を実施し,機序の解明のための多面的な手段として確立できた。 上述の問題のため,むしろ機序の解明実験に注力することができ,その結果として総合的には当初の予定同等以上の成果が得られていると判断している。すなわち最新の解析手法であるフローサイトメトリーを用いるFACSの本研究のためのin vitro,in vivo両方の実験系が確立できた。現時点でアポトーシスの誘導を確認でき,さらにさまざまな解析を実施できる準備が整ったといえる。また抗がん剤との比較から,今後の研究方向の一つを決定する結果も得られている。さらに本手法を用いることで,実験条件最適化のために必要となる実験試料数を抑えることができる可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
実験に有効な試料(鶏卵)数の確保の問題は,経時的に改善されていると考えているが,柔軟な研究推進の方向性が必要である。ここまでに確立できたフローサイトメトリーを用いるFACSの本研究のためのin vitro,in vivo両方の実験系の活用が,機序解明のための非常に有効な手段になると考えられ,さらに実験条件最適化のための手段としても活用できる可能性もある。 したがって,FACSを用いた実験解析による機序解明を主軸に進めていく。これと並列に,あるいは連携させてその他の実験を進める。具体的には,機序解明に関しては使用するFACSのテストキットを拡大するとともに,細胞切片によるアポトーシス検査などを併用して進める。発育鶏卵法を用いた実験による,実験条件の最適化および装置の改善も継続して実施し,その際FACSにより得られる知見を反映し活用する。抗がん剤との併用実験も実施し,実際的な治療方法として検討する。 マウスを用いた実験については,管理区域内で実験するために,可搬性の高い電源装置の開発を進める。マウスに対する印加実験は治療方法としての確立に向けた重要な実験ではあるが,現時点では,総合的に判断すればFACSによる研究の重要性・優先性が高く,研究の進展状況を判断して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な要因としては,物品(ガスクロマトグラフ)が,研究進展の方向により不要になったことである。一方そのため別の測定装置の消耗品を購入したが,比較すると金額は小さかった。また,研究試料の状態が望ましくなく,結果として試料の購入が減少し,そのため実験消耗品の購入も減少した。調査旅行は,学会の発表内容等を検討して取捨選択を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究進展の方向により新たにFACSによる計測を開始したが,これを推進するためこのための消耗品費用が今後拡大する。また研究試料の状態の改善に伴い,購入が減少していた研究試料をこれまでに想定していた分と合わせて購入する。
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