研究課題
パルス幅がナノ秒と短い大電力をパルスパワーと呼び、単発でのエネルギーは10Jと極小である。このパルスパワーを生体に印加することにより、皮膚がんの消滅や傷の回復(医療分野)、アオコの処理(水環境)、柔らかい高齢者用食品(健康福祉)、藻類からの油分離(エネルギー)、植物工場や魚養殖工場(農漁業)等、多くの重要な研究がなされており、この新しい異分野融合型の研究領域をバイオエレクトリクスと名付けている。パルスパワーの生体への作用の解明と応用展開を目指して、世界トップレベルの15機関でBioelectrics 国際コンソーシアムを形成している。本研究目的は、バイオエレクトリクスに特化した全固体素子を用いたパルスパワー技術の新展開とパルスパワーの生体への作用の解明である。さらに、本基盤研究の遂行とともに、Bioelectrics 国際コンソーシアム各機関との共同研究を通した応用研究の展開につなげる。平成27年度は、パルスパワーを大きくしてアポトーシス誘導機構につながる成果を得ると共に、パルスパワー生成水中放電をウナギに当てて、その成長への影響を明らかにした。アオコ処理のための衝撃波を効率的に起こせるシステム開発を行い、パルスアーク放電でも長期間運転が可能な電極開発を行った。国際共同研究も進み、フランスのチームと藻類からのオイル抽出実験を行った。又、チェコのグループと沿面放電に関する基礎研究を進めた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究計画として記述した、パルスパワーの細胞への作用(アポトーシス誘導機構)、パルスパワーによるウナギ養殖の可能性、アオコ処理のための衝撃波を効率的に起こせるシステム開発、及びバイオエレクトリクス国際コンソーシアム機関との共同研究推進の目的をおおむね達成した。
当初計画通り、平成28年度は、下記項目の研究を実施する。1.高エネルギーパルスパワー発生装置開発、及びパルス幅が10ナノ秒の高繰り返しパルスパワー発生装置の開発を行う。2.パルスパワーのがん細胞への作用の研究の最終段階として、アポトーシスで死滅するのか、ネクローシスで死滅するのかの解明を行う。3.アオコの殺藻機構解明や大腸菌の殺菌機構解明を行う。4.国際的に大きい問題となっているバラスト水処理に関する性能試験を行い、実用化の可能性を検討する。5.Institute of Plasma Physics(チェコ)、University of Toulouse(フランス)、Eindhoven Univ. of Technology (オランダ) との共同研究を継続する。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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