当初の研究計画に沿って以下の研究を行い、所期の成果をあげた。 研究課題1:高効率パワーデカップリング技術の開発:これまでの研究成果を応用して、昇降圧チョッパ方式のパワーデカップリング回路を用いた非絶縁形パワーコンディショナとその制御方式の開発を行った。また、出力電力1kWの評価試験機を製作し、性能評価を行った。その結果、パワーデカップリング回路動作時でも電力変換効率の低下を最小限に抑制し変換効率94.3の高効率を実現できることを立証した。 研究課題2:インダクタの小形低損失設計技術の開発:各種磁性材料の直流磁界バイアス特性に加えて、磁性体内部の磁束密度不均一性を考慮した鉄損解析手法を開発した。これにより、従来のように同一材料でも磁性体形状によって鉄損値が異なる理由を明確化するとともに、磁性材料の形状にかかわらず高精度に鉄損を計算できることを立証した。さらに、フェライト、センダスト純鉄粉の3種類の磁性材料について、その直流磁界バイアスに伴う鉄損変化特性を踏まえて、インダクタの比較設計を行った。その結果、低損失として知られるフェライトよりもセンダストの方が低損失・小型化の点で優れていることを明らかにした。 研究課題3:コンデンサの損失評価装置の開発と上寿命コンデンサの選定:BHアナライザを用いた電力用コンデンサの損失計測装置を開発し、電解コンデンサ、ポリプロピレンフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサについて大電流通流時の損失特性を計測・評価を行った。電解コンデンサは大電流通流時のESRが大幅に低下する、セラミックコンデンサは特定の周波数帯域でESRが低下する、ポリプロピレンフィルムコンデンサはESRの周波数依存性が小さく大電流高周波用途に最も適していることが明らかとなった。フィルムコンデンサを用いたパワーデカップリング回路はパワーコンディショナの長寿命化に有益なことを立証した。
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