研究課題/領域番号 |
25289079
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 威友 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50343009)
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研究分担者 |
谷田部 然治 北海道大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (00621773)
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
橋詰 保 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80149898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学センサ / 半導体物性 / 表面・界面物性 / 電子・電気材料 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
多孔質ナノ構造の形状制御と電気的・光学的物性の評価に取り組んだ。具体的には、窒化物半導体表面と電解液界面の電気化学反応の詳細を明らかにし、多孔質ナノ構造の形状制御に成功した。理論計算と分光測定により多孔質ナノ構造の電位分布、光の反射・吸収特性をを明らかにし、センサ応用に向けた基礎的知見を得た。 1.窒化物半導体(n-GaN, p-GaN, AlGaN)と電解液界面に高電界が生じた場合、バンド端光吸収が長波長側へシフトすることを実験的・理論的に明らかにした。印加電圧を変えて分光測定を行ったところ、n-GaNバンド端吸収波長360nmに対し、370nm-380nmにおいても強い吸収特性を示した。形状制御性に優れた新しい多孔質構造形成プロセスを考案した。370nmの単一光を裏面より照射することで、強い電界が発生する孔の先端のみに光吸収を誘発し、孔の形成(エッチング)に用いられる正孔を孔先端にのみ集中的に生成させる方法である。これにより、より深く基板電界方向に沿って直線的に孔を形成することが可能となった。 2.逐次速度緩和法を使って3次元ポアソン方程式を解く計算機シミュレーションにより、多孔質構造内部のポテンシャル分布を明らかにした。孔の先端でポテンシャル形状が急峻となり、高電界が発生することを理論計算により確認した。また、隣接した孔と孔の間(孔壁)の間隔を制御することにより、提案する電子の伝導チャネルとして機能する事を確認し、次年度取り組む化学センサ設計に繋がる結果を得た。 3.多孔質構造と電解液界面における光電エネルギー変換、光化学エネルギー変換、電気化学エネルギー変換の基礎特性を評価した。多孔質構造の大きな表面積と電解液界面に発生する高電界効果により、エネルギー変換効率を大幅に向上することを実験的に確かめ、多孔質構造センサの優位性を示す結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的としていた窒化物半導体多孔質ナノ構造の形状制御に成功し、光学物性の評価と計算機シミュレーションによるポテンシャル形状の理論解析から化学センサの設計に繋がる有益な結果を得た。研究成果の公表として、査読付きの学術誌2編、国内外の学会12件の発表があり、当初の計画とおり順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成27年度)も事業交付申請時の研究計画に従って実施する。前年度までに得られた知見を基盤とし、多孔質構造への機能修飾と化学センサの試作を行う。 (1) 電気化学的手法による孔内壁表面の機能化 GaN単層の多孔質構造を初期基板とし、孔内壁表面に金属微粒子(Ptなど)を堆積する手法を開発する。電解液中の金属イオンは正に帯電しているため、多孔質電極には負の電圧を印加し金属微粒子を電解析出させる。またp型GaN基盤については、キセノン光源により光照射しながら負の電圧を印加する手法を用いる。生成した光歴電子を供給して金属イオンを還元し、金属微粒子を析出させる。 (2) 多孔質構造を有する窒化物半導体高感度化学センサの作製 多孔質構造上に、ソース・ドレイン電極を形成し、提案する高感度化学センサを試作する。pH+センサや水素ガスセンサを想定し、それぞれの化学センサに対して、検出物質の濃度変化と応答電流の相関を明らかにする。さらに、多孔質構造の形状や寸法とセンサ感度の相関を明らかにし、さらなる高感度化に向けた構造の最適化に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
GaN基板代および光学部品代として計上していた予算の一部について、効率的に研究が進んだため予定より使用額が少なかった。このため、研究の進展にあわせて効果的に使用することが望ましいと判断し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度として特に必要と思われるGaN基板の購入と、研究の進展にあわせて必要となった備品:キセノン光源の購入に充てる計画である。
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