研究課題/領域番号 |
25289081
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
鵜殿 治彦 茨城大学, 工学部, 教授 (10282279)
|
研究分担者 |
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20203078)
江坂 文孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (40354865)
磯田 幸宏 独立行政法人物質・材料研究機構, 電池材料ユニット, 主幹研究員 (80354140)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 熱電変換 / シリサイド半導体 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、地殻中資源量が豊富な元素で構成され、毒性が低いなどの特徴を備えたシリサイド 半導体(Mg2Si, MnSi1.75)に結晶成長技術でナノ構造を導入(ナノ構造バルク化)することで熱 電性能を飛躍的に向上させ、普及が容易な高効率熱電素子を開発することを最終目的として研究を行っている。 Mg2Siはn型の熱電材料として300℃~600℃の中温域で優れて発電能力(パワーファクター)を示すが、熱伝導率が高いために熱電変換効率は十分に高くない。熱伝導率を1/10まで低減できれば,室温付近でさえ高い熱電変換効率を示す材料となり得る。MnSi1.75はp型の熱電材料としてMg2Siと同じく中温域の熱電材料として期待される。この熱伝導率はMg2Siの約1/3と比較的低いが、ナノ構造を利用して更に低い熱伝導率を実現できれば変換効率の高いp型熱電材料として、n型Mg2Siと対で利用できる。 本年度は主に変調によるシリサイド半導体ナノ構造結晶の育成としてMg2Si系およびMnSi1.75への不純物偏析を行い、電界変調及び温度変調による不純物偏析結晶を合成した。Mg2SiではBiとSbの添加結晶で添加量と熱伝導率の低減を詳細に評価し、0.5~1at%の添加で熱伝導率が半減することを見いだした。TEM観察ではこれら不純物の偏析は確認できず、均質に分散していると推測された。この熱伝導率低減機構を考察するため、非調和格子動力学法(ALD法)により第一原理的に不純物原子による熱伝導率の低減について検討した。その結果、原子の質量差が熱伝導率の低減に主として寄与していることが明らかにできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿ってに変調によるシリサイド半導体ナノ構造結晶の育成としてMg2Si系およびMnSi1.75への不純物偏析を行い、電界変調及び温度変調による不純物偏析結晶を合成した。現時点では、不純物のナノオーダー周期での偏析は確認できていないが、0.5~1at%というごく僅かな不純物の添加で熱伝導率が1/5以下に半減することを見いだせた。また、連携研究者による非調和格子動力学法(ALD法)という第一原理的にフォノンの緩和時間を計算するモデルを利用し、不純物原子の質量差が熱伝導率の低減に主として寄与していることが明らかにできた。この結果は、偏析による変調構造を加えれば熱伝導率が更に低減できることを示しており、概ね順調な状況と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画は以下の通りである。 1. Mg2SiおよびMnSi1.75でより不純物偏析を利用できる合成条件を見いだす。2.透過電子顕微鏡による結晶中の微細構造観察、SIMS等を利用した不純物の偏析評価、3. シリサイドモジュールの試作評価、4. ALD法を用いたフォノン散乱機構の解析と結晶成長へのフィードバック
|
次年度使用額が生じた理由 |
装置の不具合で実験計画がわずかに変更になった.このための実験消耗品として41294円を繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度実験を追加で行うことによって繰越金41294円を使用する。
|