研究課題
偏光の光学的制御は、偏光性を利用した光学応用に向けて要素技術となる。特に、紫外・深い紫外域における偏光検出技術は、高密度記憶媒体や、環境センシング等への応用が期待される。本課題では、ワイドギャップ酸化物半導体ZnOに着目する。ZnOは、半導体的性質と誘電体的性質を合わせ持つ物質である。半導体的性質としてのバンドギャップエンジニアリングは、紫外から深い紫外域まで幅広い波長帯域を人工的に制御することが可能である。一方、誘電体的性質として分極構造は、光励起した電荷(電子・正孔)の空間分離の効率化に寄与する。故に、本研究では、非極性ZnO(11-20)の分極方位制御及び電子構造制御を通じて、高い偏光性と光電機能を実現することを主眼とした。高い偏光性を実現するために最適なバンド構造(価電子帯)を決定するために、非極性ZnOにおけるk・p摂動法に基づいた理論計算を行った。試料の面内方向に対して面内圧縮歪を導入することで価電子帯のエネルギー分裂が大きくなり、高い偏光性が得られることが分かった。理論的予測に基づいて、面内圧縮歪を有する非極性ZnO薄膜は、高い偏光特性を示し、その結果は理論的考察と一致した。しかし、ZnO単層膜における光電変換効率は、数%と低く、それは貫通転位や格子欠陥を通じた薄膜面内への格子歪の導入に依る。故に、ZnO/Zn1-xMgxO量子井戸構造を適用し、構造的欠陥を介さずにZnO層に格子歪を導入することに成功した。量子井戸試料は、原子・分子スケールで人工制御可能なパルスレーザー堆積法と高速電子線回折を併用し、高品質な試料作製を行った。作製されたZnO/Zn1-xMgxO量子井戸試料は、15%程度の光電変換効率を示し、ZnO単層膜の変換効率よりも向上した。故に、ZnOの分極・電子構造制御に基づいて、紫外域における高偏光性及びその光電機能を実証した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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