研究課題/領域番号 |
25289086
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
波多野 睦子 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00417007)
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研究分担者 |
岩崎 孝之 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80454031)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子・電気材料 |
研究実績の概要 |
インバータの電力損失を現状より一桁低減するための第一ステップとして、本研究では、低損失ダイヤモンドFETの実現を目的とする。ダイヤモンド半導体の物性の特徴を活かし、n型ダイヤモンドの選択成長法用いた高整流特性を有する横型pn接合ダイオードを適用することにより、新しい原理で動作する接合型FETのデバイス性能の研究とキャリア伝導制御の原理検証を行う。25年度は下記の結果が得られ、ダイヤモンドFETの動作を実現し,次世代パワーデバイスに重要な300度以上の高温環境下での耐性の優位性を示した。さらに低オン抵抗化に必要なコンタクト抵抗低減のプロセスを開発した。得られた結果をもとに、キャリア伝導のモデル化を進めた。 (1) 横型構造のFETを試作し、伝達特性を評価することにより、特性オン抵抗は,室温と400℃でそれぞれ52.2、1.8 mΩcm2となり、高温において大幅に減少することがわかった。450℃という高温においてもリーク電流は0.1pA程度に留まっており,ダイヤモンド半導体のワイドバンドギャップの特長を反映している.オン/オフ比は全ての温度において7桁を超えた。また,高温において理論限界に近い立ち上がり特性を示すことを確認している。電界としては、シリコンカーバイドやガリウムナイトライドの理論限界を超える値が得られた。 (2)横型 pn接合の高耐圧化 耐圧向上を目的として、選択成長過程の解明とナノスケールでの接合の解析を行い、接合の高品質化を図った。その結果、室温における耐圧として566 V、高温(200℃)において耐圧は608 Vを得た。さらに、選択成長機構と接合のキャリア輸送特性をモデル化した。 (3)コンタクト抵抗の低減 ソース・ドレインに高濃度ボロンを含むダイヤモンド膜を挿入することにより、コンタクト抵抗の低減を図ることを目的とし、プロセスを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
試作した横型pn接合ダイオードは、当初に予測したより良好な特性を有していため、SiCやGaNなどの理論限界を超える絶縁破壊電界、450℃での高温での動作も確認することができた。ダイヤモンド半導体のパワーデバイスとしての優位性を示すものであり、得られた成果は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた高性能pn接合を用いて、大電流化を目指した縦型構造接合FETの設計、伝導度変調の新規デバイスとその構造の提案を行う。またノーマリオフ動作を実現するための、微細化プロセスを開発する。具体的には、低ダメージで形成する高い寸法精度のトレンチ構造、1μm以下の微細加工技術、などのデバイスのトータルプロセスを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品が安く入手できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前倒しに得られた高耐圧の特性、高温での安定性などのパワーデバイスとしての優位性を示す成果を国際会議などで発表するための旅費、また微細デバイスの試作費に用いる。
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