研究課題/領域番号 |
25289088
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
只友 一行 山口大学, 理工学研究科, 教授 (10379927)
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研究分担者 |
酒井 朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20314031)
山田 陽一 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00251033)
岡田 成仁 山口大学, 理工学研究科, 助教 (70510684)
山根 啓輔 山口大学, 理工学研究科, 助教 (80610815)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GaN基板 / 半極性面 / HVPE / MOVPE / 研磨 |
研究概要 |
本研究目的はサファイア基板全面に高品質半極性{20-2-1}面GaNを成長させ、自立{20-2-1}面GaN基板を得る結晶成長技術を確立することである。 本年度は特注品となる{22-43}面サファイア基板に基板表面と平行な面として{20-21}面GaNを成長させる実験を中心に行った。最初に{22-43}面サファイア基板表面にストライプ状のトレンチを形成し、次にそのトレンチのc面近傍側壁からc面GaNをMOVPEを使って成長させ、{20-21}面GaNを得た。GaNの{20-21}面がサファイア基板の表面と平行であることはX線回折で確認した。次に、この{20-21}面GaNテンプレート上にHVPE成長により厚膜成長を行った。最初はヒロックの発生等によりHVPE成長したGaNの表面は荒れた面となり、クラックの発生により厚膜GaNのHVPE成長は非常に困難であった。このヒロック及びクラックの発生の抑制にはSiO2マスクを使った横方向選択成長(ELO:Epitaxial Lateral Overgrowth)が有効であることを見出し、現在では自発分離した2インチ弱の直径の厚膜GaNの作製が可能になっている。 自発分離したGaN厚膜は連携する企業で研磨して頂き、表面平坦性の良好なGaN基板を得ている(RMS:0.24nm@5 μm×5 μm)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サファイア基板へのトレンチ加工(フォトリソグラフィとドライエッチング技術)、トレンチのc面近傍側壁からのc面GaN成長(MOVPE成長)、{20-21}面GaNテンプレート上の厚膜GaN成長(HVPE成長)、自発分離した厚膜GaNの研磨加工(外注加工)といった一通りの技術開発を行った。当初の年度目標は達成したと考えている。 しかしながら、c面GaNの成長初期過程で発生し、c面に沿って伝播する転位が表面まで貫通するために、貫通転位密度が多いといった問題点が顕在化した。また、-c面成長した領域に積層欠陥が入り易く、HVPEによる厚膜成長でも低減しないことも明らかになり、今後の研究の進め方の見直しが必要になる可能性がある。構造欠陥評価に関しては大阪大学と共同でSPring-8を使った実験・解析を進めている。光学特性評価に関しては山口大学内の共同研究を推進している。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究で、転位と積層欠陥の低減が{20-21}面等の半極性面GaNの成長において大きな課題であることが分かった。また、転位等の構造欠陥の低減には成長条件の最適化も有効であることも分かっている。一方、通常のELOでは半極性面GaNの構造欠陥の低減は難しいことも明らかになっている。したがって、ELO用のマスクパターン、マスク材料等の見直しを進める必要がある。また、{20-2-1}面GaNの成長を行うためには、本事業での計画では -c面GaNの成長が必要になる。-c面GaNの成長で危惧されることは、新たな積層欠陥の導入、或いは著しい増加である。この成長は全く未知の領域であるが、成長条件の最適化により対応する予定である。積層欠陥の導入・増加が避けられない状況が続けば、{20-21}面GaN基板を本方法で作製し、基板の裏面({20-2-1}面)を使って結晶成長、各種評価、デバイス作製を行うこととする。以上の今後の研究の推進方法をまとめる。 ① {20-21}面GaN成長において、転位、積層欠陥の低減を引き続き検討する。(ELO用のマスクパターン、材料の見直し。成長条件の最適化) ② -c面成長の基礎検討を実施する。積層欠陥の低減が避けられないようであれば{20-21}面GaNの裏面を使うことを考える。 ③ 結晶評価に関して継続してSPring-8及びTEMを使った結晶構造評価、光学特性評価を継続して実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、本研究課題に関連する国際学会に参加するための旅費・参加費に使用する予定であったが、当人の都合により参加できなくなったこと、論文発表に関わる英文添削に伴う謝金支払いの必要がなくなったこと等の事由により、予算執行ができなくなり当該助成金が生じた。 次年度の研究費に加算し、本研究課題に関わる物品費、学会参加のための旅費・参加費や英文添削等に関わる謝金等に使用する予定である。
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