研究課題/領域番号 |
25289090
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
福永 博俊 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10136533)
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研究分担者 |
中野 正基 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20274623)
森村 隆夫 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (30230147)
柳井 武志 長崎大学, 工学研究科, 助教 (30404239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノコンポジット / 磁石 / Sm-Co / 積層構造 / 磁性体 |
研究実績の概要 |
Sm-Co層とα-Fe層の間に高融点金属のバッファ層を挿入し,層間の原子拡散を抑制すると共に,層間での交換相互作用を制御することにより,高保磁力を試みた。バッファ層としてZr,Mo,W,Taを検討したところ,Taバッファ層が保磁力改善に最も効果的であった。バッファ層の理論厚(Ta組成と積層数から計算した厚さ)を1nm以下に制御した膜では,(BH)max値を損なうことなく,保磁力を顕著に改善することができた。 X線回折の結果からは,SmCo3の析出量の減少とSmCo5の析出量の増加が観察され,保磁力改善の一因と考えられる。一方,TEM観察から,熱処理により積層構造が乱れFe2Taが析出することが確認され,所期の目的であったSm-Co/Ta/α-Fe超多周期積層構造は実現できなかった。しかしながら,Taの導入により,保磁力は増加することから,析出Fe2Taがピニングサイトとなっていることも予測される。
異方性Sm-Co/α-Feナノコンポジット厚膜磁石を得るために,低中温での成膜とポスト熱処理により磁気的効果を組み合わせた「二段熱処理」を検討した。 まず,Sm-Co単層膜について,基板温度を変化させて厚膜磁石を作製し,基板温度の効果を調べた。その結果,基板温度250~300℃で成膜すれば,面内に配向したC-Sm厚膜磁石が得られることが明らかになった。 上記の結果を基に,基板温度を250~300℃として,超多周期Sm-Co/α-Fe厚膜を成膜し,650℃のポスト熱処理で磁気的に硬化したところ,面内を磁化容易方向とする,超多周期Sm-Co/α-Feナノコンポジット厚膜磁石を作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最終目標としている「200℃において,(Nd,Dy)-Fe-Bを超える(BH)max値」をすでに達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度までの研究成果を基礎に,平成28年度においては,以下の研究を行い, (BH)max値を更に改善する。 (Ⅰ)層間バッファ層の最適化による保磁力の改善: H26~27年度の研究においては, Zr, W, Mo, Taバッファ層の効果を調べ,顕著な保磁力改善効果があったのはTaバッファ層であった。しかしながら, TEM観察のよりTa挿入が積層構造を崩す傾向があることも明らかになった。そこで,H28年度の研究においては,半導体プロセスで使用されているTaNバッファ層を導入し,積層構造を維持することによりバッファ層による保磁力改善効果を最大化する。また,予備実験で効果の確認されたSm-Co/MM/α-Fe/MM構造(MMは金属元素)についてもCu層厚を変化させてその効果を最大化する。 (Ⅱ)磁気異方性の増加: H27年度の研究においては,二段熱処理により,積層構造を崩すことなく,Sm-Coの配向を面内に向けることができた。H28年度の研究においては,熱処理条件を最適化する。さらに,添加元素を導入して配向度を改善する。 (Ⅲ)Fe量の増加: H27年度の研究においては, α-Feの量を25%に固定して,バッファ層の保磁力改善効果と二段熱処理による配向制御の効果を調べた。一層の高(BH)max化を実現するために, α-Fe量の限界量を明確にする。
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